研究課題/領域番号 |
24590374
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
今村 龍 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (10311680)
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キーワード | 自然免疫 / NLRファミリー蛋白 / PYNOD / 遺伝子発現 / 胃がん |
研究概要 |
細胞膜のTLR蛋白群および細胞質のNLRファミリー蛋白群は、外来の微生物のセンサーとして働いている。申請者らは、自ら発見したNLR蛋白の一種PYNODが炎症抑制性の活性を持つことを見出した。さらに胃がんマウスモデルの病変部でPYNODの発現が著明に上昇していることを発見した。これらの結果から炎症~発がんのプロセスにおいてPYNODの発現が上昇し抗炎症作用の一端を担っているのではないかと推測される。 今年度は、胃がんマウスモデルの病変部におけるPYNODの発現部位(組織、細胞)を同定するために、免疫組織染色に使用可能なマウスPYNODに対する新たなモノクローナル抗体の作製を試みた。得られた複数のハイブリドーマの上清をスクリーニングしたところ、ウエスタンブロッティングでは特異的反応を示すクローンが存在するものの、PYNOD欠損マウスの組織を用いた組織染色により特異性を示すものが得られていない。 また胃がんマウスモデルにおいて、炎症誘導マウスとPYNOD欠損マウスとの交配により作製したマウスを解析したところ、炎症反応の程度がPYNOD遺伝子の有無によって変化することはなかった。 さらに、昨年度の解析からヒト胃がん患者のサンプルについてPYNODの発現がmRNAレベルで高い傾向が見られたため、さらに患者サンプルを増やしPYNOD発現を定量PCRおよびウエスタンブロッティンッグ、さらに組織染色で検討したが、現在までのところ胃がん患者におけるPYNOD高発現について有為な結果が得られていない。 一方PYNOD欠損マウスの解析により、自然免疫系の異常は現在までのところ認められていないが、獲得免疫系の著明な異常が認められることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々が樹立していたモノクローナル抗体は組織染色の特異性に問題があることが判明したため、免疫組織染色に使用可能な抗PYNODモノクローナル抗体の樹立を再度開始した。しかし予想以上に難航しており、未だ優れた抗体を得ることができず、当初の実験計画の進捗に影響を与えている。またヒトの胃がんのサンプルについては定量PCRによりPYNODの発現が腫瘍部位で高い症例があることを見い出していたが、ウエスタンおよび組織染色とも合わせて解析した結果、未だ確証には至っていない。一方、派生的な研究から、PYNOD欠損マウスには獲得免疫系の異常が認められるという大変興味深い結果を得ることができた。PYNODが獲得免疫系で役割を果たす機序を解明するにあたってもPYNOD発現制御のメカニズムは重要な意味を持ってくるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き新しい抗PYNODモノクローナル抗体の樹立を試み、免疫組織染色によるPYNODの発現検討が可能となるようにする。胃におけるプロスタグランディンE2産生増強マウスモデルやDSSによる大腸の炎症モデル以外のマウス炎症モデルにおけるPYNOD発現変化を検討する。PYNODの発現制御に関して分子レベルでの解析を行うためにPYNOD発現をモニターするインジケータープラスミドを完成させる。ヒト疾患サンプルについては、共同研究により症例数をさらに増やして検討する。特に胃がん症例に関しては、特定の組織型 (papillary adenocarcinoma) でPYNODの高発現が認められる傾向があるので、この組織型の症例を共同研究により収集し検討を加える予定である。
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