研究課題/領域番号 |
24590377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岸田 聡 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20402563)
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研究分担者 |
門松 健治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80204519)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経芽種 / モデルマウス / 次世代シーケンサー / がん幹細胞 |
研究概要 |
本申請では、小児の難治性固形腫瘍である神経芽腫の動物モデルMYCN Tgマウスに基づき、神経芽腫の発生と自然退縮を制御する遺伝子を同定する。小児癌である神経芽腫は胚発生のメカニズムに依存して発生していると考えられることから、ヒト神経芽腫の再現という点において、動物モデルであるMYCN Tgマウスの有用性は極めて大きい。何故ならば、ヒトとマウスで胚発生のメカニズムは高度に保存されているからである。我々は、MYCNTgマウスにおける神経芽腫の発生と自然退縮を詳細に確認してきている。これまでに行ってきたいくつかの網羅的遺伝子解析(mRNA発現、染色体異常)と、データベース上で公開されている臨床検体のデータを組み合わせて利用することによって、MYCN Tgマウスにおける神経芽腫の発生と自然退縮において機能する遺伝子を同定・解析する。 平成24年度は「tumor sphereで発現増加」「初期腫瘍で発現増加」、そして「臨床データにて発現量と予後との間に相関がある」という基準を満たした3遺伝子に注目した。これら3遺伝子についてin situ hybridization (ISH)を行い、2週齢MYCN TgマウスhemizygoteのSuperior Mesenteric Ganglion (SMG: 神経芽種の原発組織)に集積している神経芽細胞における発現を検討した。その結果、発現量の多寡はあるものの、3遺伝子とも神経芽細胞における発現を認めた。更に、リアルタイムPCRにより、SMGにおける3遺伝子の発現について、個体間における差を検討した。30匹弱のhemizygoteについて解析を行ったところ、特に一つの遺伝子について、全体をおよそ7:3ほどの比に分割する可能性を示唆する発現パターンを示した。将来神経芽種を発症する70%と免れる30%を規定している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初予定していたスクリーニングストラテジーのうちの一つから3遺伝子をピックアップし、主にその解析を行った。スクリーニングストラテジーとしては5つの組み合わせを準備していたが、今回使用したものは、サンプルとしてtumor sphere、そして解析方法として次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を中心に据えたものであり、優先順位としては5つの中で筆頭に考えていたものであった。臨床データベースからの情報も加味してピックアップされた3遺伝子について、「神経芽種の進展と退縮を規定する」という機能を示唆する発現パターンが得られ、次年度以降に向けて、順調に進展しているものと考えている。他のスクリーニングストラテジーでは、染色体異常を解析したCGHアレイの解析結果を使用するものがあり、これをデータベース上のヒト神経芽種の結果と照合し、マウスとヒトで共通して増幅・欠失が生じた遺伝子をピックアップしていく。これについては、マウスとヒトという異なったデータ間の比較であるという性質上、マニュアルでチェックしていかねばならないため、まだ進行中である。現時点では上記3遺伝子の解析に注力し、進展もしているため、概ね計画通りと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から解析している3遺伝子について、引き続き主にISHによる発現解析を進め、MYCN Tgマウスにおける神経芽種発生に伴う発現パターンを検討する。想定していた発現パターンを示した遺伝子については、ノックダウンのためのshRNAや発現ベクター、抗体等の準備を行い、神経芽種細胞株を用いた機能解析へと移っていく。また、これら以外の候補遺伝子をピックアップするためのスクリーニングを順次進め、多角的に候補遺伝子を探索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、マウス飼料、細胞培養やリアルタイムPCR、ISH等の為の消耗品を購入するための物品費として1,000,000円、国内学会への参加費として100,000円、論文の投稿料他として300,000円を計上した。平成25年度から順次行っていく候補遺伝子の機能解析に必要な抗体やshRNAの購入金額も、物品費に含めている。
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