研究課題/領域番号 |
24590378
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 朗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70464302)
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キーワード | Wnt5a / β-カテニン非依存性経路 / 腸管炎症 / 樹状細胞 / Th1細胞 / 炎症性サイトカイン / IL-12 / IFN-γ |
研究概要 |
炎症性疾患におけるWnt5aシグナルの役割を明らかにするために、私共はこれまでに①薬剤(DSS)誘発性腸管炎症モデルにおける潰瘍部位においてWnt5aの発現が亢進すること、②Wnt5aヘテロKO(+/-)マウスでは野生型マウスと比べてDSS誘発性腸管炎症病態が軽減すること、③タモキシフェン誘導性時期特異的Wnt5a conditional KO (Wnt5a cKO)マウスにおいてもDSS誘発性腸管炎症病態が軽減すること、④Wnt5a cKOマウス由来の大腸において、腸管炎症時における炎症性サイトカイン(TNFα、IL-6、IL-12等)の発現が減弱することを見出した。このことは、Wnt5aシグナルが腸管炎症を増悪させることを示唆しているが、その分子機構は依然として不明のままである。本年度は、 1)タモキシフェン誘導性Wnt5a cKOマウス由来の大腸において、コントロールマウスと比較してIFNγ産生CD4陽性T細胞(Th1細胞)の割合が減少していること、さらに大腸におけるCD11c陽性樹状細胞において、Th1細胞分化に必須なサイトカインIL-12の発現量が減弱していることを見出した。 2)大腸組織における繊維芽細胞、上皮細胞、血球細胞でのWnt5aの発現量を比較したところ、繊維芽細胞においてWnt5aが高発現していることを見出した。 3)血球系細胞特異的Wnt5a cKOと腸管上皮細胞特異的Wnt5a cKOマウスにおいては、DSS誘発性腸管炎症に対する耐性が観察されないことから、少なくとも血球細胞や腸管上皮細胞が産生するWnt5aは腸管炎症の増悪に重要でないことが示唆された。 本年度の解析結果は、Wnt5aシグナルを介する腸管炎症増悪機構解明の一助になると考えられ、学術的に意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タモキシフェン誘導性Wnt5a cKOマウスの大腸において、Th1細胞が減少していることを見出し、さらにその要因が、大腸における樹状細胞のIL-12の発現量の減少であることを明らかにしたことは評価できる。しかし、依然として樹状細胞におけるWnt5aシグナルの作用機序が不明のままであるため、上記の評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
大腸におけるWnt5aシグナルの標的細胞が樹状細胞であることが判明したため、Wnt5aシグナルが如何にして樹状細胞に作用して炎症応答を制御するのかを解明することを目標に以下の研究を行う。 1)Wnt5a受容体であるRor2の血球系特異的遺伝子欠損マウスを既に作製しているので、このマウスから樹状細胞を単離してWnt5a受容体の欠失が炎症応答シグナルに及ぼす影響を生化学・分子生物学的手法を用いて解析する。 2)レンチウィルスベクターを用いたWnt5aの強制発現や精製Wnt5aタンパクを樹状細胞に作用させることで、Wnt5aシグナルを増強した状況での樹状細胞の炎症応答を生化学・分子生物学的手法を用いて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の実験計画を考慮した場合にRNA抽出キットや磁気ビーズを用いた細胞分離等に高額な消耗品を使用するため。 主として消耗品の購入と実験動物の飼育管理維持費として使用する予定である。
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