研究課題/領域番号 |
24590381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
冨田 修平 鳥取大学, 医学部, 教授 (00263898)
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研究分担者 |
玉置 俊晃 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80179879)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 低酸素応答 / 肺高血圧症 / 転写因子 / HIF / 微小環境 / 酸化ストレス / 活性酸素 |
研究概要 |
本研究課題では、微小低酸素環境が引き起こす血管再構築における血管内皮細胞(EC)の役割を明確化するために、ECのHIFシグナルによるその機能的・形態的変化がどのように血管再構築の主要変化に関与する血管平滑筋(SMC)の増殖・遊走を引き起こすのか、その分子機構の解明を目指している。具体的には、ECおよびSMCの各細胞系譜特異的HIF-1遺伝子欠失マウスにおける肺高血圧症モデルあるいは大腿動脈結紮虚血モデルによる血管再構築を主な研究対象とする。確立したマウスを用いて血管再構築モデルを作製することにより、生体内でECあるいはSMCに発現するHIF分子がどのように血管再構築過程に関与するのかを形態的観点より理解する。以上の結果をもとに、ECのHIFシグナル関連分子による血管再構築の人為的制御システムを構築し、ECを標的とした血管再構築の伴う疾患の新たな治療方針を提案する。本研究課題遂行初年度終了までに、我々はEC特異的なHIF-1beta遺伝子欠失マウスを作製し、マウスにおけるモノクロタリン(MCT)誘導性肺高血圧症モデルを確立して、その表現型を検討した。その結果、肺高血圧症の病態モデルでは、ECに発現するHIF-1betaが、内皮由来血管収縮因子の一つであるendothelin-1の発現を制御して、病態形成に関わる可能性を示唆した。本変異マウスの肺高血圧症モデルでは、右心系負荷を示す右心室重量/左心室重量比率は減少し、組織学的解析による小肺動脈の血管周囲の筋層化も軽減されていた。これらを踏まえ、細胞内での分子レベルの変化について解析するために、現在、肺動脈血管内皮細胞の単離技術の確立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な実験に関して、トラブルなく進めることができているが、本研究課題の初年度である24年度に、申請者の異動があり、研究実施の実質的な時間は大幅に削減された。本年度は、それを挽回すべく、新しいラボの立ち上げを含め、準備万端整えて、本研究課題遂行に向けて邁進している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果より、血管内皮細胞(EC)内のHIF-1beta(ARNT)が、マウス肺高血圧症モデルの病態形成の仲介をすることが分かった。ARNTの機能的なパートナーのうち、ECに発現する主要なものは、HIF-2alphaである。平成25年度は、肺動脈血管内皮細胞の単離技術の確立と、ECでのHIF-2alphaを介する病態関連エフェクター分子の検索技術の開発を目指して下記のとおり遂行する。 『EC株の培養実験系におけるHIFシグナルを介するECの細胞応答解析』 生体内での低酸素環境が直接ECに作用することによりどのような血管再構築に関する細胞応答を引き起こしているのかどうかを分子レベルで調べるために、最近確立された不死化EC株を用いて、培養条件下のECのHIF-1分子の機能を解析する。EC株を低酸素の培養条件で、機能獲得型解析(HIF-1/2およびARNT遺伝子過剰発現系による)および機能欠失型解析(HIF-1/2遺伝子ノックダウンによる)を含めて下記の3点について解析を進める。(a)血管透過性変化および接着分子発現変化:形態学的解析及び各種関連因子の発現(VEGF, TNFα, IFNs, Interleukins, integrins, cadherinsなど)について網羅的に検討する。(b)活性酸素種・窒素種の測定:蛍光プローブ(Hydroxyphenyl Fluorescein (HPF)/Aminophenyl Fluorescein(APF))を用いた蛍光イメージング解析、蛍光測定解析をする。(c)炎症関連の多認識型受容体の発現解析:関連遺伝子(scavenger receptor, TLRsなど)の網羅的発現解析を行なう。これらのECの低酸素応答変化が、HIFシグナルにおいてどのような位置付けにあるのかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、安価な購入物品を入手することにより、次年度使用金(28800円)が発生した。これらは、来年度の消耗品購入に充てる予定である。
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