研究課題/領域番号 |
24590386
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 和子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00553273)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 脂質 / 皮膚 |
研究概要 |
BLT2は、皮膚表皮ケラチノサイトに発現するGPCRである。12-HHTはBLT2のリガンドとして機能するが、血液凝固の際にアラキドン酸から酵素依存的(COXおよびTxA2S)に産生される。 (1)マウスを用いた皮膚創傷治癒における12-HHT/BLT2の役割解析 マウス背中の皮膚に円形に穴をあけ、経時的に滲出液を採取して質量分析装置を用いてエイコサノイドの一斉定量を行ったところ、時間依存的な12-HHTの産生が観察された。また、アスピリン(COX阻害剤)を投与したマウスでは12-HHTの産生がほぼ完全に抑制されていた。そこで、アスピリン投与およびTxA2S欠損マウスを用いて皮膚の創傷治癒速度を測定したところ、どちらのマウスにおいても治癒の遅延が観察された。また、BLT2欠損マウスでも創傷治癒が遅延したことから、12-HHT/BLT2シグナルは治癒を促進していると考えられた。次に、糖尿病モデルマウス(db/db)を用いて、創傷部にBLT2アゴニストを塗布したところ、治癒が促進した。このことから、BLT2アゴニストは、糖尿病患者に見られる難治性皮膚潰瘍の治療薬となり得るのではないかと考えられる。 (2)マウスを用いたアレルギー皮膚炎におけるBLT2の役割解析 野性型およびBLT2欠損マウスにOVA溶液を経皮的に反復塗布することでアトピー性皮膚炎を惹起した。血中のOVA特異的IgEとIgG1の抗体価を測定したところ、BLT2欠損マウスで抗体価が亢進する傾向が得られた。そこで、皮下と腋窩のリンパ節を採取し、細胞をOVAで再刺激したところ、IL-4とIL-13の産生がBLT2欠損細胞で亢進した。一方、腹腔内にOVA/Alumを投与した場合にはOVA特異的IgEとIgG1の抗体価に変化は無かった。以上のことから、BLT2欠損マウスでは皮膚におけるバリア機能が低下している可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、ほぼ計画通り研究が進み、結果を得ている。皮膚の創傷治癒の研究においては、12-HHT/BLT2シグナルが創傷治癒に促進的に寄与していることを明らかにし、現在論文投稿を行いリバイス実験中である。アレルギー性皮膚炎の研究においては、個体レベルでBLT2が皮膚のバリア機能を亢進しているのではないかという興味深い結果が出てきており、今後再現性を見るとともに細胞を用いて分子メカニズムについて解析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
皮膚の創傷治癒におけるBLT2の役割について、組織学的解析、分子メカニズムの解析を行うとともに、ヒトの皮膚創傷治癒における12-HHT/BLT2の役割を明らかにし、論文を完成させる予定である。また、アレルギー性皮膚炎モデルから、BLT2が皮膚のバリア機能に寄与している可能性が示唆されたため、細胞間接着におけるBLT2の役割について、細胞内シグナル分子も絡めて解析していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、動物飼育/購入費、細胞培養費、抗体や酵素や脂質リガンドなどの生化学実験費、などとして物品費に110万円、学会発表や研究打ち合わせなどの旅費に30万円使用する予定である。
|