研究課題
基盤研究(C)
癌幹細胞特異的治療法の開発は、癌の治療抵抗性や転移に対して有効な治療法に繋がる可能性があり期待されている。本研究では、主要な癌幹細胞マーカーの一つであるEpCAMが癌幹細胞の細胞内代謝に与える影響について解析し、その阻害による癌幹細胞特異的治療法の立案を目的として行った。まずEpCAMが、癌治療標的と成りえるかについて、EpCAM陽性卵巣癌幹細胞を移植した担癌マウスを作成し、抗EpCAMモノクローナル抗体を用いた治療実験を行った。その結果、抗EpCAM抗体の投与により、有意に腫瘍の増大を抑制出来ることが分かり、EpCAMが、癌幹細胞に対する治療標的となり得る可能性があることが分かった。次に、EpCAMの発現が細胞内活性酸素の制御に関わるような代謝機構に対して影響を与えるかについて検討するために、EpCAMのRNAiを作成した。 EpCAM高発現ヒト大腸癌細胞株HCT116細胞においてEpCAMの発現をノックダウンし、活性酸素レベルの変化について、活性酸素の蛍光プローブDCFH-DAおよびミトコンドリア由来活性酸素の蛍光プローブMitoSOXを用いた検討を行った。その結果、EpCAMの発現低下は、ミトコンドリア由来活性酸素の増加を引き起こし、細胞内活性酸素の蓄積を誘導することが分かった。このことから癌幹細胞マーカーEpCAMは、ミトコンドリア由来の活性酸素の発生を抑制することで、細胞内活性酸素レベルを負に制御し、腫瘍形成を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究によって、実際にEpCAM分子が癌の代謝に関与していることおよび腫瘍形成を促進することを見出だすことが出来ており、本研究の重要な仮説である、EpCAMが癌細胞の細胞内代謝に与えるという事実を確認することが出来たため。
平成24年度に実施した研究によってEpCAMが癌細胞の細胞内代謝に与えるという事実を確認できたことから、平成25年度よりEpCAM分子の発現がどのように、ミトコンドリア由来の活性酸素の発生を抑制するのかについての分子メカニズムを明らかにしていく。具体的には、ミトコンドリア由来の活性酸素の発生に関与する事が知られている、糖代謝制御機構の変化や癌の治療抵抗性に関わる抗酸化能に対するEpCAM分子発現の影響について詳細に検討を行うとともに、EpCAMによる細胞内代謝制御機構を標的とした治療法の確立を目指す。
本研究費は主として消耗品と国内旅費、外国旅費、印刷代、研究成果投稿料などに利用する予定であり、設備備品を申請する予定はない。研究設備はすべて整っており、新規の設備投資は必要とせず、直接研究に関わる経費のみを支出する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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