研究課題/領域番号 |
24590392
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
永原 則之 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10208043)
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研究分担者 |
伊藤 隆明 熊本大学, その他の研究科, 教授 (70168392)
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
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キーワード | ノックアウトマウス / メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素 / メルカプト乳酸システイン尿症 / 硫化水素 / 硫黄酸化物 / 抗酸化作用 / 不安行動 |
研究概要 |
25年度はホモロマウス同士の交配によるMST-KOマウスの作成、系統維持および繁殖に成功し、現在は順調に進んでおり、昨年度予備実験で得られた行動学的実験の結果を確証した。結論としてMST-KOマウスは不安行動が実験で観察された。行動学実験として、Open field test, Light/Dark transition test, Elevated plus-maze test, 3-chambered social interaction testsおよび Forced swim testsを行った。Elevated plus-maze testではコントロールと比較して、顕著に陽性を示した。前頭葉と海馬において、HPLCを用いたドーパミン含量分析ではコントロールの差異はなかったが、セロトニンと5-ヒドロキシインドール酢酸は前頭葉で有意に多かった。さらに、セロトニン1A受容体をRT-PCRで分析したが、前頭葉、海馬ともに差異は認めなかった。一方、脳は肉眼的にもHE染色およびNissl染色を用いた顕微鏡的にも形態的変化を認めなかった。以上の結果を学会や招待講演で発表し、論文としてAntioxidant enzyme, 3-mercaptopyruvate sulfurtransferase-knockout mice exhibit increased anxiety-like behaviors: a model for human mercaptolactate-cysteine disulfiduriaというタイトルでScientifc Reportに発表した。 また、海外(ギリシャとアメリカ)とMST-KOマウスにおける血管内皮細胞の生理的な変化と、それに伴う循環動態の変化およびの病態に関して共同研究を進めている。 従来、交配の効率が極めて悪かったヘテロマウス同士の交配でホモMST-KOマウスの作成に最近成功したため、同腹の野生型マウスが得られるようになった。系統維持と繁殖を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MST-KOマウスを予定通り作成し、ホモマウス同士の交配による繁殖に成功した。さらに行動学実験や脳のセロトニンや受容体に関する分析を行い結果が得られ、その研究成果を学会、招待講演、論文で発表した。また、最近、ヘテロ同士の交配に成功したため、同腹の野生型が得られ、行動学実験を再度施行する準備を行っている。同時に行動異常の原因となる脳における病態の解明を行っている。 さらに国内外との共同研究に発展し、特に硫化酸化物や硫化水素の循環動態における生理的作用の一つを解明するために実験の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ヘテロ同士の交配は困難であったため、従来はホモマウスを交配してMST-KOマウスを繁殖させていた。最近、ヘテロマウス同士の交配に成功し、繁殖を行っている。同腹の野生型が得られるため、それらを実験に供する。今後、ホモマウス同士を交配して得たMST-KOマウスと、ヘテロマウス同士を交配して得たMST-KOマウスを用いて、以前に行った行動学実験を含め新規に比較実験を行い、両者の差異を明らかにする。行動異常の病因となる脳内のセロトニン代謝異常やそれらの受容体の発現異常の確証を得るための実験を計画している。また、ヘテロ同士の交配とホモマウス同士を交配して得られたMST-KOマウスでは、本病態において差異が予想されるが、それらを明らかにする実験も計画している。 ホモマウス同士を交配して得られたMST-KOマウスを用いて、以下のシステムにおける症状の有無の検証と病態の解明を行う実験を計画している。対象は小脳経由の記憶システム、心血管系および消化器系であり、国内外の研究者と共同実験を進めている。 また、他のシステイン異化酵素のKOマウスにおいて、薬物等で刺激を与えて初めて症状が現れる事が証明されている。MSTは抗酸化タンパク質でもあるため、MST-KOマウスに薬物投与で酸化ストレスを与えて、予測される病態を観察する一連の実験を計画している。 以上、MSTの欠損による硫化水素や硫黄酸化物の産生低下あるいは欠損に伴う病態の網羅的な解明を行う研究を継続する。また、従来より組織内における微量の硫黄酸化物や硫化水素を測定する微小電極の作成を試みてきたが、最終年度はその完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の使用額は本年度残額と翌年度分として請求した助成金の合算である。残額が生じた理由として、本年度に使用した研究費の支払いの処理が間に合わず次年度の支払いになったためである。 本年度の支払いに予算残額を充当する。ホモKOマウス同士およびヘテロKOマウス同士の交配と繁殖ならびに本マウスのES細胞などの維持費が研究費の大部分を占めており、70万円を予定する。今年度に投稿する論文費用(論文別冊代を含めて)として15万円を予定する。また旅費として、ベルギーへ国際学会出張および国内学会出張等に20万円を予定する。また、2名の共同研究者に研究費として不十分であるが15万円を当てる。 以上の予算配分を予定しているが、他に細胞あるいは器官培養に要する費用や組織内の硫化水素および硫黄酸化物の微量定量分析の開発に多大な費用が必要である。本研究費の一部を当てる予定であるが、他に研究費の獲得が必要である。
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