研究課題/領域番号 |
24590393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岡本 研 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60267143)
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研究分担者 |
草野 輝男 日本医科大学, 医学部, 助教 (30434129)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | xanthine oxidase / xanthine dehydrogenase / repurfusion injury / brain ischemia / febuxostat |
研究概要 |
タンパク質の構造に基づくXORによる水酸化反応機構と薬剤の開発法の検討 タンパク質の立体構造、尿酸生成反応機構の詳細をX線結晶構造解析にて検討し解明し、タンパク質の立体構造に基づく阻害剤の開発法を検討した。蛋白構造に基づく強力な阻害剤においてバクテリアおよび哺乳類酵素で作用の大差を見出し分子動力学的解析を用いてその理由の解明を行っている。新規XOR阻害剤開発の分子基盤を確立するため、酵素反応機構、既存の阻害剤の阻害機構の詳細解明を行った。アロプリノールは基質ヒポキサンチンのアナログであり、痛風治療薬として40年来使用されている化合物である。我々はアロプリノールの代謝物オキシプリノールとXORの複合体結晶構造を解明することで、阻害機構を解明した。オキシプリノールは還元状態の活性中心モリブデン原子と共有結合する反応中間体類似体を形成し、強固な阻害を示すことがわかった。さらに複合体構造は下に述べる基質結合モード決定の際のよいモデルとなった。この複合体はモリブデンの酸化とともに解離することを確認した。このことはモリブデンの酸化に伴う経時的な阻害活性の低下を意味している。なお、XORの天然の基質であるキサンチンの結合様式と基質の活性化機構には異なるモデルが提唱されており、論争があった。このことは酵素学的な興味というだけではなく、阻害剤設計の点からも重要な論点であった。我々は還元状態でのXOR-尿酸複合体の結晶構造を決定することで、キサンチン水酸化の反応中間体を直接観察することに成功した。以前に行った実験結果と合わせ、酵素反応機構、水素結合ネットワークを介した基質活性化機構を明らかにした(論文1,2、著作1を参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵素反応機構の解明と、XOR阻害剤とタンパク質分子の相互作用の解析はひと通りのまとまりを得た。これを受けて、新規XORによる神経細胞変性に対する保護作用の評価を行った。心肺停止状態を模倣した重度の全脳虚血再灌流モデルマウスの脳神経細胞ダメージをキサンチン酸化還元酵素阻害剤が軽減させ得るか評価した。キサンチン酸化還元酵素阻害剤は阻害機構の異なるアロプリノールとフェブキソスタットを用いて比較した。マウス両総頸動脈および脳底動脈をマイクロクリップで14分間閉塞させた後に血液再灌流させ、4日後に脳を摘出し組織標本とした。Nissl 染色で海馬 CA1、CA2 領域の残存神経細胞数を計測したところ、未手術群と比較して顕著な神経細胞の減少を確認できた。しかしアロプリノールとフェブキソスタット共に全脳虚血再灌流に伴う海馬神経細胞の脱落を抑える事はできなかった。脳における XOR の発現は非常に低く薬剤の直接の効果は低い可能性があり、また今回採用した重傷モデルの虚血が強すぎたため再灌流の影響が隠された可能性もある。 昨年度の研究ではマウスの全脳虚血再灌流状態を再現性よく作製する事に成功しており、限定的ではあるがフェブキソスタットの脳組織防護効果の可能性がみとめられた。今後の研究では異なる虚血モデルを作成し、投与法の検討を行いつつフェブキソスタットの防護効果につき検討を続けることが可能となった。全脳虚血のモデルと、それを行う手技が確立されたことで、今後行う様々な活性酸素ストレス評価モデルマウスへの適応が可能になった。また活性酸素ストレス評価モデルマウスの長期観察もほぼ終了しており、25年度中に完了する予定である。ストレス評価モデルマウスを用いて上記脳虚血再灌流障害を作成し、スーパーオキサイドアニオンの病態への影響を詳細に評価することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
XOR由来O2-の臓器に与える長期的影響の観察 野生型XORをノックアウトし、O2-超産生変異酵素(W338A/F339L)によって置換されたトランスジェニックマウス(wt-knockout/mutant-knockin (XO-01)について、誕生するマウスの数、性差、発育曲線、寿命、形態の変化等を観察していく。動物の飼育と管理は連携研究者である草野が行う。正常マウスとの間に何らかの差が認められた場合、適宜サクリファイスし、各臓器でのXOR発現量の差、酸化ストレスマーカーと考えられているGST、NQO1、TRX、HBP23などの酵素群、抗抗酸化作用に働く転写因子Nrf2、Keap1、NF-κB、慢性心疾患マーカーであるBNPの発現量をmRNA定量により臓器ごとに観察する。酸化ストレスを受けた結果として生じる核酸の誘導体、8-oxoグアニンの定量を抗8-oxoグアニン抗体を用い行い、またカルボニル化したタンパク質の検出を同様の抗体を用いた手法により検出する。糖尿病発症が予測されるため、血中糖化ヘモグロビン量の定量を行う。測定にはキット類を用いる。その他必要な器具類は揃っている。あわせて組織中のXOR活性、プリン代謝物の抽出と定量を行い、プリン代謝の変動の有無を観察する。マウスの寿命(2~3年)を考え、本項目は次年度以降も継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は消耗品につき購入額が予定より少なくなったため、25年度に繰り越される額が生ずることとなった。これは酸化ストレスのマーカーとなる物質の検出試薬、キットの一部の購入が25年度となったためである。これらは25年度初頭に購入を行う。 それに加え、活性酸素ストレス評価モデルマウスの飼育費用、その他分子生物学キット、オリゴヌクレオチド、一般試薬類、飼料、プラスチック器具類、ガラス器具類などを購入予定である。 24年度の成果につき論文作成中、学会発表の予定であり、英文校正、投稿料、学会旅費に使用する。
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