これまでに虚血再灌流障害へのキサンチン酸化酵素の関与が示唆される研究が報告されている。また抗痛風薬であるキサンチン酸化還元酵素阻害剤が虚血再灌流障害を軽減させるとの報告もある。そこで本研究では心肺停止状態を模倣した重度の全脳虚血再灌流モデルマウスの脳神経細胞ダメージをキサンチン酸化還元酵素阻害剤が軽減させ得るか評価した。キサンチン酸化還元酵素阻害剤は阻害機構の異なるアロプリノールとフェブキソスタットを用いて比較した。マウス両総頸動脈および脳底動脈を14分間閉塞させた後に血液再灌流し、4日後に脳を摘出し組織標本とした。海馬 CA1、CA2 領域の残存神経細胞数を計測したところ、未手術群と比較して顕著な神経細胞の減少を確認できた。しかしアロプリノールとフェブキソスタット共に全脳虚血再灌流に伴う海馬神経細胞の脱落を抑える事はできなかった。脳における XOR の発現は非常に低く薬剤の直接の効果は低い可能性があり、また今回採用した重傷モデルの虚血が強すぎたため再灌流の影響が隠された可能性もある。上記研究をさらに推し進め、我々は全脳14分虚血後再灌流マウスの脳組織酸化ストレスマーカーの検出を行い、4HNE、3NTについていずれも80KDa、43KDaにて陽性バンドの検出に成功した。さらに免疫組織染色にて、神経細胞、グリア細胞の染色を確認した。これら酸化ストレスがXOR阻害剤で改善されるかを検討したところ、フェブゾスタットでは脳組織保護効果はなかったが、アロプリノールでは効果が確認された。両者の違いはアロプリノールがヒポキサンチン異性体であり、BBBを透過できること、またアロプリノール自身につよい抗酸化作用があるという化学的性質の違いが両者の効果の差を生んでいると考えられた。また、XORによる活性酸素生成の分子機構を解析し、それについての原著論文、総説の発表を行った。
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