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2013 年度 実施状況報告書

中心体キナーゼを介したシグナル伝達機構と疾患

研究課題

研究課題/領域番号 24590396
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

後藤 英仁  愛知県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 室長 (20393126)

キーワード分裂期 / キナーゼ / 中心体 / Plk1 / Akt
研究概要

本研究は、中心体に局在する分裂期キナーゼ群のAurora-A、Polo-like kinase 1(Plk1)の結合蛋白質を探索し、その機能解析を行うことが目的である。昨年度、Plk1の結合蛋白質として14-3-3ガンマの解析を同定した。1)14-3-3ガンマは分裂期特異的にPlk1と結合すること、2)この結合はPlk1-セリン99のリン酸化修飾依存性に引き起こされていること、3)この結合によりPlk1の触媒活性が上昇すること、4)これら一連のPlk1の活性化過程を障害するとスピンドルチェックポイント依存的に分裂中期に停止してしまうことを明らかにした。本年度は、このセリン99のリン酸化修飾の調節機構について中心に検討を行った。その結果、セリン99のリン酸化修飾は、Akt(キナーゼ)やその上流に位置するPI3キナーゼの触媒活性依存的に引き起こされることを明らかにした。驚いたことに、精製タンパク質を用いたin vitroの解析ではAktはPlk1のセリン99を直接リン酸化しえないことも判明した。しかし、精製Plk1タンパク質でなく、分裂期細胞から免疫沈降したPlk1を用いた場合には、Aktが効率よくPlk1のセリン99をリン酸化することが明らかになった。このような現象は、間期細胞から免疫沈降したPlk1を用いた場合には全く認められなかったので、Plk1に分裂期特異的に結合する蛋白質がAkt依存的なPlk1-セリン99のリン酸化修飾を促進している可能性が高いと考えられる。現在、分裂期特異的なPlk1結合蛋白質の同定を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

14-3-3ガンマとの結合によるPlk1の機能変化およびその生理的意義については、概ね、順調に解明できた。我々の研究成果は、同時に、新たなPlk1制御機構の存在を示唆する結果となった。つまり、1)分裂期特異的にPlk1に結合し、AktによるPlk1のセリン99のリン酸化修飾を促進している可能性、2)Aktによって活性化されるキナーゼが分裂期特異的にPlk1に結合し、Plk1のセリン99をリン酸化している可能性の2つが考えられる。現在、このPlk1結合蛋白質の分子同定には至っておらず、このシグナル伝達経路の全容が明らかになったとは言いがたいのも事実である。しかしながら、我々が導きだした結果は、分裂期のPlk1の14-3-3ガンマを介した活性化過程にPI3キナーゼーAkt経路が深く関与していることを示すものであり、癌におけるPI3キナーゼーAkt経路の異常活性化と染色体不安定性の関係を考えるうえでも示唆に富む知見といえる。

今後の研究の推進方策

本研究にて出てきた(上記の)新たな疑問を解明すべく、新たなPlk1結合蛋白質を明らかにしていく予定である。また、Plk1経路の解明に時間を取られ、遅れがちなAurora-A結合蛋白質の解析も随時進行させていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

Plk1プロジェクトの進行に際し、予想外に時間が取られてしまい、Aurora-A結合蛋白質のために取り分けておいた資金を使わず、残す結果となった。
Plk1プロジェクトに概ね目処が立ったため、今後は、Aurora-Aプロジェクトに残しておいた資金を用いて、Aurora-A結合蛋白質の解析を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Defect of mitotic vimentin phosphorylation causes microophthalmia and cataract via aneuploidy and senescence in lens epithelial cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Matsuyama M., Tanaka H., Inoko A., Goto H., Yonemura S., Kobori K., Hayashi Y., Kondo E., Itohara S., Izawa I., and Inagaki M.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 288 ページ: 35626-35635

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.514737

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The p90 ribosomal S6 kinase (RSK) inhibitor BI-D1870 prevents gamma irradiation-induced apoptosis and mediates senescence via RSK- and p53-independent accumulation of p21WAF1/CIP1.2013

    • 著者名/発表者名
      Neise D., Sohn D., Stefanski A., Goto H., Inagaki M., Wesselborg S., Budach W., Stuhler K., and Janicke R.U.
    • 雑誌名

      Cell Death Dis.

      巻: 4 ページ: e859

    • DOI

      10.1038/cddis.2013.386

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PI 3-kinase-dependent phosphorylation of Plk1-Ser99 promotes association with 14-3-3γ and is required for metaphase-anaphase transition.2013

    • 著者名/発表者名
      Kasahara K., Goto H., Izawa I., Kiyono T., Watanabe N., Elowe S., Nigg E.A., and Inagaki M.
    • 雑誌名

      Nat. Commun.

      巻: 4 ページ: 1882

    • DOI

      10.1038/ncomms2879

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cell cycle progression by the repression of primary cilia formation in proliferating cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Goto H., Inoko A., and Inagaki M.
    • 雑誌名

      Cell. Mol. life Sci.

      巻: 70 ページ: 3893-3905

    • DOI

      10.1007/s00018-013-1302-8

    • 査読あり
  • [学会発表] Screening of novel Aurora-A-associated proteins to prevent primary cilia assembly at the centrosome in proliferating cells.

    • 著者名/発表者名
      Goto H. and Inagaki M.
    • 学会等名
      第65回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      ウィンク愛知(名古屋市)
    • 招待講演
  • [学会発表] Screening of novel Aurora-A-associated proteins

    • 著者名/発表者名
      Goto H., Era S., Li P., Kasahara K., Inoko A., Izawa I., Mochizuki H., Togashi T., Kawamura Y., Kawakami Y., Goshima N., Kiyono T., and Inagaki M.
    • 学会等名
      第72回日本癌学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
  • [図書] ヒトと医学のステージへ拡大する細胞周期 中山敬一編、実験医学増刊号、31巻、2号2013

    • 著者名/発表者名
      後藤英仁、稲垣昌樹.
    • 総ページ数
      186-193 (316-323)
    • 出版者
      羊土社

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公開日: 2015-05-28  

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