研究課題
本研究は、中心体に局在する分裂期キナーゼ群のAurora-A、Polo-like kinase 1(Plk1)の結合蛋白質を探索し、その機能解析を行うことが目的である。昨年度、Plk1の結合蛋白質として14-3-3ガンマの解析を同定した。1)14-3-3ガンマは分裂期特異的にPlk1と結合すること、2)この結合はPlk1-セリン99のリン酸化修飾依存性に引き起こされていること、3)この結合によりPlk1の触媒活性が上昇すること、4)これら一連のPlk1の活性化過程を障害するとスピンドルチェックポイント依存的に分裂中期に停止してしまうことを明らかにした。本年度は、このセリン99のリン酸化修飾の調節機構について中心に検討を行った。その結果、セリン99のリン酸化修飾は、Akt(キナーゼ)やその上流に位置するPI3キナーゼの触媒活性依存的に引き起こされることを明らかにした。驚いたことに、精製タンパク質を用いたin vitroの解析ではAktはPlk1のセリン99を直接リン酸化しえないことも判明した。しかし、精製Plk1タンパク質でなく、分裂期細胞から免疫沈降したPlk1を用いた場合には、Aktが効率よくPlk1のセリン99をリン酸化することが明らかになった。このような現象は、間期細胞から免疫沈降したPlk1を用いた場合には全く認められなかったので、Plk1に分裂期特異的に結合する蛋白質がAkt依存的なPlk1-セリン99のリン酸化修飾を促進している可能性が高いと考えられる。現在、分裂期特異的なPlk1結合蛋白質の同定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
14-3-3ガンマとの結合によるPlk1の機能変化およびその生理的意義については、概ね、順調に解明できた。我々の研究成果は、同時に、新たなPlk1制御機構の存在を示唆する結果となった。つまり、1)分裂期特異的にPlk1に結合し、AktによるPlk1のセリン99のリン酸化修飾を促進している可能性、2)Aktによって活性化されるキナーゼが分裂期特異的にPlk1に結合し、Plk1のセリン99をリン酸化している可能性の2つが考えられる。現在、このPlk1結合蛋白質の分子同定には至っておらず、このシグナル伝達経路の全容が明らかになったとは言いがたいのも事実である。しかしながら、我々が導きだした結果は、分裂期のPlk1の14-3-3ガンマを介した活性化過程にPI3キナーゼーAkt経路が深く関与していることを示すものであり、癌におけるPI3キナーゼーAkt経路の異常活性化と染色体不安定性の関係を考えるうえでも示唆に富む知見といえる。
本研究にて出てきた(上記の)新たな疑問を解明すべく、新たなPlk1結合蛋白質を明らかにしていく予定である。また、Plk1経路の解明に時間を取られ、遅れがちなAurora-A結合蛋白質の解析も随時進行させていく予定である。
Plk1プロジェクトの進行に際し、予想外に時間が取られてしまい、Aurora-A結合蛋白質のために取り分けておいた資金を使わず、残す結果となった。Plk1プロジェクトに概ね目処が立ったため、今後は、Aurora-Aプロジェクトに残しておいた資金を用いて、Aurora-A結合蛋白質の解析を行う。
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