生活習慣病の環境要因として初期の胎内環境の関与も重要である。本研究は、胎生期の中でも前期に着目し、その環境変化が老齢化する前の若い成体に与える影響についてマウスを用いて解析した。胎生前期低栄養による代謝や遺伝子発現の変化は自由摂食時には特に認められなかったが、絶食後に検出された。低栄養群では血漿遊離脂肪酸レベルがコントロール群に比べ有意に低かった。さらに低栄養群では肝臓のHsp90-Hsp70分子シャペロン経路遺伝子群の発現誘導が障害されていた。従来提唱されてきたクロマチン修飾の永続的変化とは別の機構、すなわちHsp90による調節機構もDOHaD現象に寄与する可能性を新たに示した。
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