研究課題
性差の確立は,雄あるいは雌のいずれになるかその方向性が決まる「性決定」の段階と,その決定を受けて精巣または卵巣が形成されていく「性分化」の段階に分けることができる。性逆転系統であるB6-XYposマウスの成獣は性染色体構成がXYであるにも拘らず,精巣だけではなく卵巣または卵精巣を有する個体が存在し,性腺における形態機能の異常が報告されている。本研究では,代表的な雄化遺伝子Sry,Sox9,Fgf9と雌化遺伝子Wnt4の発現を経時的に解析することで,これらの遺伝子の発現時期や発現量が性差の確立・維持に与える影響を検討した。NIH系B6マウスとB6のY染色体のみMus domesticus poschiavinusのものに置き換えたB6XYposマウスB6-XYpos胎子性腺(17~21尾体節[ts])の組織学的検索ならびにqRT-PCRによる各種性分化関連遺伝子のmRNA発現量の定量を行った。B6 XYposマウス胎子性腺ではSry発現の時点で野生型B6 XYマウスとは異なる発現様式がみられたことから、B6 XYposマウスにおける性逆転の原因はSryより上流にあると考えられた。Fgf9の発現には左右差がみられ,野生型雄(20ts/21ts)では左性腺の発現が高く,XYpos性腺では左で野生型雌より発現が高いものが,右では野生型雄より低い発現を示す個体も認められた。このことはYposで出現する多様な表現型を反映した結果と考えられた。また,SryとSox9発現の遅れが,野生型雄の右性腺におけるFgf9発現の遅延,または低発現を引き起こしたとも考えられた。一方,Wnt4では,野生型雌では発現が増加し,野生型雄で減少する傾向がみられた。また,Yposでは20/21tsにおいて雌より低い発現を示す個体があったことから,Yposで出現する多様な表現型のゆらぎを生み出す原因と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
最終年度にあたる今年度には,以下の点についてまとめていかなくてはならず,それがまだ,手つかずになっている。すなわち,発生プログラムと組織特異的DNAメチル化プロファイルの形成: 哺乳類の精巣分化を誘導するSRY(Sry)遺伝子は発生段階に特異的な発現をDNAメチル化により制御されている.このSryの上流には組織特異的に異なるメチル化状態になる領域(tissue-dependently and differentially methylated region: T-DMR)が存在しており,発現時期である胎齢11.5日目の雄生殖巣ではT-DMRは低メチル化状態,発現が無くなる15.5日目では高メチル化状態であることが明らかになっている.しかし,性分化異常を呈する例ではこのT-DMRのメチル化状態はどのようになっているかは不明である.そこで,胎齢3.5, 8.5, 11.5, 15.5日目の胚および胎子を用い,T-DMRおよび性分化関連遺伝子群についてメチル化状態を解析し,クロマチン構造の変換の有無を明らかにする[田渕,院生3-5]
研究計画の変更等は特にない。これまで蓄積された成果に沿って新たな展開がなされうる可能性がある.とくに,①真性半陰陽マウスの精巣と卵巣(同一ゲノム背景)の個体発生学的エピゲノム解析②Y染色体特異動原体の変異とエピゲノム制御(Xモノソミーモザイシスムの発現機構解明)は生殖細胞の性差はいつ,どのように生じるのかを解明すること大きな手がかりをつかむことが出来ると考える.
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