研究課題
個々の腫瘍の性質に応じた個別化診断、それに基づく分子標的治療が施行され、肺腺癌や大腸癌などに対する分子標的治療は、その高い奏功率と副作用が少ない薬剤として、患者さんのQOL及び延命に多大な役割を果たしている。一方、放射線治療においては個々の腫瘍の性質を考慮せず一律な照射が行われており多くの子宮頚癌に有効であるが、一部の癌では、治療後の耐性獲得や悪性形質への変化により早い時期での転移巣の形成などが起きること、実験レベルでは放射線照射後の上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition: EMT)を介した悪性形質への転換も報告されている。今回我々は、子宮頚癌を対象に患者検体を用いた免疫染色、細胞株を用いた遺伝子変異の解析などによる腫瘍性質の評価放射線治療効果予測、治療への積極的な貢献を目指すことを目的に昨年度に続き以下の検討を行った。4種類の子宮頸癌細胞株(Caski, C33A, SiHa, Hela)を用いて放射線照射(10Gyx1, 2Gyx10)を行いその早期(48時間後)及び再増殖期(21日後)のEMT関連蛋白の発現をreal time PCR法やwestern blotting法を用いて調べた。C33AとCaskiは照射に反応しいずれの放射線照射法においても50%以上の細胞が死に至ったが、SiHaとHelaは放射線照射抵抗性で同じ線量では50%以上の細胞が生き残った。また、C33AとCaskiの放射線照射後再増殖期の細胞ではMMP-2, 9の発現や酵素活性、運動能の亢進を認めた。また、cDNA マイクロアレイ解析結果から、C33Aでは照射早期と細胞増殖期でいずれも照射前に比較して2倍以上の遺伝子発現を認めるものが9個同定された。
2: おおむね順調に進展している
細胞株を用いたin vitroの実験系では放射線感受性の細胞株と耐性の細胞株が存在し、感受性細胞でも再増殖期にはEMT関連蛋白の発現やその運動能が亢進していることがわかった。現在、EMT関連転写因子のひとつをノックダウンすることによってそれらの表現型への影響を解析中である。免疫染色学的解析では、子宮頸癌の診断時と再発して多発転移から死亡された剖検検体が6症例集まり初診時及び再発転移時それぞれの検体に関してEMT関連蛋白の発現を中心とした蛋白発現プロファイルを検討中である。in vivoの系での検討が未着手であり、早急に検討を進める。
in vitroの検討と並行してin vivoの転移実験を行う。 in vitroの検討で確認されたC33Aの放射線治療後の悪性表現型を示した細胞と放射線照射を行っていないC33Aを用いて、ヌードマウスの尾静脈投与を行い肺転移の個数を評価する。免疫染色を行う対象症例を10症例程度に増やすため関連病院などへの協力を仰ぐ予定である。
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