研究課題
一般に癌に関しての腫瘍動態及び病理形態学的多様性に対応する発癌過程の全体像は、癌遺伝子及び癌抑制遺伝子の発現異常が、癌化との関連において重要な役割を担うことが知られている。前立腺癌に関しては、多くの癌遺伝子及び癌抑制遺伝子異常の検討がなされてきたが、前立腺癌感受性遺伝子座におけるSNPと、その癌化への影響に関しての研究報告は極めて僅かであり、我々は前立腺癌感受性遺伝子座(既に同定された10遺伝子座)を中心にSNPの解析をし、その遺伝子座でのSNPに影響され得る近傍の前立腺癌関連遺伝子の発現異常を明らかにする。まず前立腺生検及び外科組織材料を中心に、非腫瘍性前立腺、PIN、前立腺癌に関して分子生物学的及び免疫組織化学的にこれら遺伝子発現を比較検討し、前立腺癌における正常→前癌病変→発癌に至る過程を、今まで我々が報告した前立腺癌関連遺伝子の発現異常結果と比較検討し、前立腺癌の腫瘍動態全容を組織学的に解析する。さらに同定し得た癌感受性遺伝子座に認めるSNPに影響されうる近傍の新規前立腺癌関連遺伝子産物に関しては、必要に応じてそれら産物を抗原とした免疫組織化学に応用可能な抗体を作製する。これら遺伝子産物に対する抗体を用いて、前立腺生検組織材料を基に、主として非腫瘍性前立腺からPINそして前立腺癌へ至る段階で、これらSNPに影響され得る前立腺癌関連遺伝子産物の発現状態を比較検討し、その症例が前立腺癌に移行するか否かを免疫組織化学的に判定可能な産物候補を決定する。さらにはホルモン抵抗性前立腺癌での抵抗性獲得過程へのこれら産物の関与の有無も検討し、前立腺癌の病態解析及び治療方針決定に対応可能な病理診断の確立を目的とする。
2: おおむね順調に進展している
平成24年以前における高知大学医学部病理学教室と、学外関連施設及び医学部附属病院に関連した前立腺癌の生検及び手術症例を把握集計し、組織型、Gleason Score、進達度(手術材料)、遠隔転移の有無等の臨床病理学的諸因子に関する基本的な統計学的解析を検討した。前立腺癌感受性遺伝子座でのSNP解析は、NKX3.1及びIRX4遺伝子に関連する領域を中心に、既に同定されているSNPも含め再確認後、その近傍に存在するその他癌関連遺伝子に影響を及ぼし得る新たなSNP候補の再検討も試みた。さらに前立腺癌関連遺伝子産物の候補として、neuropeptide-yを前立腺癌患者血中の腫瘍マーカーとして同定した。
既に報告した前立腺癌抑制遺伝子NKX3.1及びIRX4発現への抑制的関与以外に、前立腺癌感受性遺伝子座に認めるSNPに影響される近傍の前立腺癌関連遺伝子を検索し、これらを筆頭に、前立腺癌感受性遺伝子座に認めるSNPに伴う近傍の前立腺癌関連遺伝子発現への影響等の検討を行う。前立腺生検及び外科組織材料を中心に、非腫瘍性前立腺、PIN、前立腺癌に関して分子生物学的及び免疫組織化学的にこれら遺伝子発現を比較検討し、前立腺癌における正常→前癌病変→発癌に至る過程を、今まで我々が報告したものも含め、今後更なる新規の前立腺癌関連遺伝子の同定も試み、それらの発現異常結果と詳細に比較検討する。前立腺癌関連遺伝子産物の候補として、neuropeptide-yを前立腺癌患者血中の腫瘍マーカーとして同定したが、その遺伝子座周囲のSNP解析も試みる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
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