研究概要 |
胃腸管間質腫瘍(GIST)の発生メカニズムや悪性度を解明し、分子病態に応じたGISTの診断や個別化治療の礎とすることを目的とした研究である。KITまたはPDGFRA遺伝子の機能獲得型変異に加え、HIF(hypoxia-induced factor)やその制御因子であるVHL(von-Hippel-Lindau), HIFの蓄積に影響を与えるTCA回路の構成因子であるSDH(succinate dehydrogenase)等の低酸素応答に関連する分子の異常を解析し、GISTの発生や高悪性化への関与を検討する。 まず、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本より、DNAを抽出し、KIT, PDGFRAについて、PCR,シ ークエンス法にて遺伝子変異を検出した。特定のKIT変異パターンがGISTの悪性度、遠隔転移を相関することが判明した。また、SDHBの 免疫組織化学染色を行った。SDHB発現消失例はGISTの5%未満であったが、リンパ管侵襲やリンパ節転移と相関することが判明した。今後はSDHAの免疫染色も行い、臨床病理学的意義を検討する予定である。なお付随して行ったGISTならびに類縁腫瘍におけるInsulin-like growth factor II mRNA-binding protein 3 (IMP3)の発現の検討においては、IMP3高発現はGISTでは観察されず、臨床病理学的意義は低いと考えられた。しかし悪性黒色腫、平滑筋肉腫、悪性中皮腫、炎症性筋線維芽細胞腫瘍などでは悪性度が高い症例において高発現していることが判明した。GISTと類縁腫瘍の鑑別にIMP3が有用であることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
SDH遺伝子変異の解析を行う。またHIFとその制御分子(SDH, FH, VHL, リン酸化mTOR)の蛋白発現を免疫組織化学染色およびWestern blottingにて引き続き解析する。HIF標的遺伝子(VEGF, GLUT-1, CAIX)については、蛋白発現( 免疫組織化学染色)およびmRNA発現レベル(定量的RT-PCR)を解析する。以上の解析結果とKIT/PDGFRA遺伝子変異パターンを総合して 、HIF関連分子の異常、標的遺伝子の発現レベルと臨床病理学的因子、病理組織学的特徴ならびに予後との相関を統計学的に解析する
|