研究課題
1. 肺がんにおけるサイトカイン、ケモカイン遺伝子の発現我々の研究室ではこれまでに不死化気道上皮細胞に変異型KRAS遺伝子、変異型EGFR遺伝子を導入し、マイクロアレイ解析によって網羅的に下流分子を検討してきた。両者で共通していくつかのサイトカイン、ケモカイン遺伝子の高発現が誘導されることを見出したが、サイトカイン遺伝子の肺癌での発現、役割については未だ不明な点が多い。肺腺癌におけるサイトカイン遺伝子(CCL3, IL24, IL1B)の発現を測定し、組織亜型や病期との関連を検討した。IL24のmRNA発現は非腫瘍部と比較して腫瘍部で優位に発現が低下していた。IL24のmRNA発現は低分化な充実性増殖型優位腺癌では低い傾向にあったが、病期では有意差は見られなかった。IL24はアポトーシスや浸潤、血管新生に関連する多彩な役割が報告されてきており、細分化した評価が重要と思われる。2. 特発性間質性肺炎合併肺がんの臨床病理学的特性特発性間質性肺炎 ( IIPs)に合併する肺癌とIIPsの特性についての報告は少数であり、未だ十分な理解が及んでいない。今回、IIP群 (207例)とIIPsを合併していない肺癌症例 ( non-IP群 : 1079例) を、対象に、それらの臨床・病理学的な差異について比較検討を行った。特発性間質性肺炎 (IIPs)合併肺癌は、高齢者・男性・重喫煙者・下葉に好発していた。組織型では、扁平上皮癌の割合が高かった。細胞亜型として高円柱状細胞の形態を示すものが殆どであった。またEGFR変異の頻度が低かった。全生存期間では、I期症例で予後不良であった。無再発生存期間では、I期腺癌で予後不良であった。今回の結果は、過去の報告に比べ、より長期観察・多数症例を対象としており、より信頼性の高い結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
サイトカイン、ケモカインのモノクロナル抗体の作成、検証に予想外に時間がかかった。間質性肺炎症例については症例数が非常に多く、臨床病理学的検討、遺伝子解析に予想外の時間が要している。
IL24はアポトーシスや浸潤、血管新生に関連する多彩な役割が報告されてきており、細分化した評価が重要と思われる。各種サイトカイン、ケモカインの免疫染色については、吸収試験を行って特異性を最終確認した後に、肺腺癌症例での解析を蓄積し、総合的な検討を行う予定である。間質性肺炎合併肺がん症例についてはRAS,EGFRなどの遺伝子解析をさらに進める予定であり、いずれの変化も認めない症例については染色体異常、メチル化異常、マイクロサテライト修復の異常についても検討を進める予定である。
モノクローナル抗体の作成、検証に予想外に時間がかかったことが影響した。特発性間質性肺炎合併肺がんの検討では検討する対象の症例数が多く、臨床病理学的解析に時間がかかり、遺伝子解析に時間がかかったことが影響した。現在モノクロナル抗体の作成、検証は進み、今後抗体を利用した解析はスムーズに進むことが予想される。特発性間質性肺炎合併肺がんの検討についても、臨床病理学的解析が一段落し、今後は遺伝子研究が順調に進むことが予想される。EGFR遺伝子の異常、予後不良例に影響を与える分子異常の解析が進むことが期待される。
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