研究実績の概要 |
変異型EGFR遺伝子によって誘導される分子変化を明らかにするため、不死化気道上皮細胞株にEGFRのexon 19 の欠失遺伝子とexon 21 L858R 点突然変異遺伝子とを導入し、細胞の変化を解析した。変異型遺伝子の細胞では顕著な増殖の抑制と、核の腫大や多核化等の細胞異型を認めた。マイクロアレイ解析により網羅的に候補遺伝子を検索した。変異型導入細胞株では、CCL3, IL24, IL1Bなどのcytokineの活動に関わる遺伝子の高発現が見られた。IL24のmRNA発現は非腫瘍部と比較して腫瘍部に有意に発現が低下していた。IL24のmRNA発現は低分化な充実性増殖型優位腺がんでは低い傾向があったが、病期では有意差は見られなかった。IL-1Bについては肺癌細胞株と原発性肺癌病変において、顕著な上昇を示すものが存在した。IL-1βの発現導入によって、非がん細胞株に細胞増殖速度の上昇、足場非依存的な増殖能といったがん形質の獲得が起きた。原発性肺癌病変においては腺房型腺癌や充実型腺癌といった高悪性度の病変においての高い発現が認められた。 特発性間質性肺炎(IIPs)に合併した肺がん例、EGFR遺伝子変異を有した多発脳転移例、EGFR遺伝子変異を有したリンパ節転移例の臨床病理学的検討を行った。IIPs合併肺がん例ではKRAS, EGFR変異頻度が低く、腺癌では高円柱状の細胞亜型を示した。I期で全生存期間、無再発生存期間について予後不良であった。多発微小脳転移例はEGFR変異例に多く、リンパ節転移例では微小乳頭型の割合が多く認められた。EGFR遺伝子変異を有した肺腺がん例の中に多発性微小脳転移を示す一群、初期段階からリンパ節転移を有する一群があり、微小乳頭状構造がその悪性度と関連があることが明らかになった。
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