研究課題
【目的】一般的な関節リウマチ(RA)患者およびエタネルセプトを中心とした生物学的製剤治療RA例(Bio)について、整形外科的な手術の際に軟骨組織や滑膜組織などの試料収集をおこない、それぞれの基本的な病理学的特徴を検討する。さらにBio例については、著効例と無効例との比較もおこなう。【方法】滑膜組織での炎症スコアの検討:一般的なRA患者15例とBio例36例の滑膜組織について、滑膜組織の炎症の程度をRooneyのhistological indexを用いてスコア化し、特にどのindexに変化があるか、検討した。Bio例については著効例と無効例の比較もおこなった。さらに、より詳細な検討のため、各種細胞マーカーで具体的な構成細胞の特徴の変化を検討し、サイトカインや蛋白分解酵素についても検討した。【結果】Bio例では特にリンパ球浸潤に関する炎症スコアが著しく低下し、線維化については増加していた。著効例と無効例との比較では、著効例での投与前後での変化率が大きく、リンパ球や血管数や密度の低下がBio例でみられたほか、滑膜表層のCD68陽性のマクロファージ系細胞や、腫大したCD34陽性紡錘形細胞も減少していた。また、TNFαやMMP-3の陽性細胞数もBio例では減少し、特に著効例での減少率が大きかった。【まとめ】Bio例の著効例では滑膜組織の炎症は病理組織学的にも抑制されていることが証明された。
2: おおむね順調に進展している
一般的な関節リウマチ患者と生物学的製剤投与例の滑膜組織の収集は昨年度に引き続いてある程度進み、データの比較や解析ができる症例数となった。また、滑膜組織での病理組織学的な解析についても、一般染色や免疫組織化学などが終了している。上記の標本について、細胞数などのカウントもすすみ、両者の比較もおこなった。さらにBio例の中での著効例と無効例の組織学的な比較や炎症スコアの比較もおこなっており、蛋白分解酵素やサイトカインについても組織学的な検討が進んでいる。臨床データも揃っているので、今後は症例数を増やして、臨床的なデータとの相関をより詳細におこなえる。
平成24年~25年と同様の内容について、さらに症例を追加して検討をおこない、得られたデータの総合的な解析をおこない、RAの疾患特異的な細胞の特定をおこなう。特に、線維芽細胞様細胞と炎症の変化との関係について検討し、関節リウマチの発症に関わる細胞や因子について研究をすすめる。さらに、生物学的製剤が上記の線維芽細胞様細胞にどのように作用し、効果をもたらすのかについて平成24年、25年に得られた結果を踏まえて、病理組織学的な検討をすすめる。1)一般的な抗リウマチ薬を用いた後に生物学的製剤に変更になった症例で経時的な変化を追えた症例について、滑膜組織の変化を比較する。検討項目については平成24-25年度に検討した項目を検討する。特に再燃例について、効果がみられた場合にも残存する細胞(線維芽細胞様細胞)の特徴を組織学的に検討する。2)一般的な抗リウマチ薬および生物学的製剤の投与前と投与後での比較3)生物学的製剤の著効例と無効例および著効後の再燃例についての組織学的な特徴の検討:特に、著効後にも残存している線維芽細胞様細胞について詳細に検討する。4)滑膜組織でのサイトカインや蛋白分解酵素および各種分子マーカーの発現の検討: 上記の滑膜組織でおもなサイトカインや蛋白分解酵素のmRNAおよび蛋白の分布を調べる。特に滑膜線維芽細胞に重点を置いて検討する。4)データ解析: 生物学的製剤の治療効果について、著効例と無効例の組織学的な特徴を検討する。臨床的なデータと病理組織像の関係について詳細に解析し、その結果より、関節リウマチの病因や骨破壊の機序、重症度や予後との関係について検討する。
購入予定だった画像解析ソフトおよび一部の染色キットの購入を次年度におこなうことに計画を変更したため。画像解析ソフトおよび染色キットを購入する
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