研究課題
我々はこれまでに上皮性卵巣腫瘍におけるHypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α)の発現解析から,明細胞癌が他の組織型に比して低酸素下環境で順応性が高いことを考察してきた.このことが明細胞癌の化学療法抵抗性に関わる因子の一つで,予後不良に繋がる可能性を報告し,明細胞癌ではphosphorylated-mammalian target of rapamycin(p-mTOR)の発現が亢進していることが,mTOR-HIF-1シグナル伝達系の活性化に関わっていると推察した.加えて,動物実験レベルでmTORの阻害が腫瘍の縮小にかなりの効果があることを実証してきた.現在は,「卵巣癌におけるHDACの免疫組織化学的発現,各種卵巣癌培養株を用いてのHDACmRNAの発現」の解析に着手しており,次のような結果を得てきている:明細胞癌では他の組織型に比してHDAC7の核内発現を示す例が多く,これらは陰性例に比して予後不良の傾向がある;明細胞癌株の方が漿液性腺癌株と比較してみると,種々のHDAC mRNA発現がより顕著である.つぎに,HIF-1ならびに関連分子をターゲットにした抗腫瘍剤の検討において,キク科のマリアアザミ(ミルクシスル)に含まれるシリマリンには,グルコ−スの取り込みや,HIF活性を抑制しPI3K-Akt-mTORシグナル伝達系を阻害するとの報告がある.薬剤の有害事象軽減の観点から,緑茶抽出物であるepigallocatechingallateは,PI3K-Akt-mTORシグナルなどを介したVEGFの抑制により抗血管新生効果を発揮すると期待されている.これらの新たな抗腫瘍効果の可能性を探る,と同時に薬剤感受性からみた卵巣腫瘍の特性と個別化を探究していく.昨年度はHIF-1α遺伝子多型について,卵巣明細胞癌を対象に「exon12 C1772T多型」の頻度および遺伝子多型が臨床的予後に及ぼす影響を検討してきた.未だ途上の解析結果であり,さらなる検討を加えてHIF-1α遺伝子多型の意義を明確にしたいと考えている.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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