研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の長期経過例では大腸癌が発生しやすいが、このUC関連癌は、浸潤したときに低分化になりやすいという特徴がある。粘膜内の早期腫瘍性病変である異形成におけるCD44細胞外ドメインの発現を検討した。 [方法]UC関連軽度異形成44、高度異形成49、浸潤癌52病変と、大腸のsporadicの軽度異型腺腫32、高度異型腺腫33、癌96例を対象とした。CD44細胞外ドメインの免疫組織化学染色を行い、発現強度と面積から発現をスコア化(0-12)して比較した。 [結果]UC関連病変では、軽度異形成、高度異形成、癌においてそれぞれ、1.7±1.5, 1.6±1.5, 1.2±1.1の発現スコアであった。これに対して、sporadic型大腸腫瘍では軽度異型腺腫、高度異型腺腫、癌でそれぞれ4.8±2.0, 4.0±1.8, 3.4±2.3であった。UC関連病変では、対応するsporadic腫瘍に比して有意に発現の減少が見られた。UC関連腫瘍においては発生の初期からCD44の異常が生じており、UC関連癌の発生・進展に影響を与えているものと考えられる。さらにADAM17などのCD44分解酵素の発現などの検索を追加する予定である。 また、UCの炎症粘膜のサンプルを用いて、プロテオーム解析を行ったところ、正常粘膜と比較して発現の増加ないし減少している蛋白が数種類同定された。そのうちの一つCarbonic anhydrase-2について、炎症粘膜における発現を組織上で確認を行ったが、UCの粘膜で発現低下を示していた。
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