研究課題
基盤研究(C)
肺腺癌は増加が顕著であり、本邦では肺癌全体の約50%、女性肺癌の約70%を占める。肺腺癌のうち、線維・血管の芯を持たない腫瘍の微小乳頭成分(micropapillary component, MPC)を有するものは高度のリンパ管侵襲・転移を起こすため予後が有意に悪く、MPCを含有する腺癌は独立した一つの臨床病理学的疾患単位であると報告されているが、依然、MPCの高い浸潤・転移能を規定する因子は全く不明である。平成24年度では、retrospective臨床病理学的研究で、外科切除された約1,100症例の肺癌のHE染色標本をレビューし、MPCを含有する肺腺癌を86症例抽出した。MPCの有無、その割合と腫瘍脈管侵襲及びリンパ節転移と患者予後との関連などを分析した。通常型の腺癌に比べ、MPC(+)腺癌は脈管侵襲とリンパ節転移の頻度が有意に高く、全生存期間が有意に短かった。MPCを有する肺腺癌は高悪性度のものであることを再確認した。組織学的にMPCが確認された腺癌とMPCを有しない通常型腺癌の凍結生組織を用い、二次元電気泳動法にてそれぞれのタンパク質発現を比較検討した。MPC(-)腺癌に比べ、MPC(+)腺癌で2.2倍以上の量で発現したタンパク質の一つはvimentinであることが同定された。現在、MPC(+)腺癌とMPC(-)腺癌に於けるvimentinのin vivo発現を比較検討中である。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要の如く。しかし、ランダム免疫法抗体作製によるMPC特異タンパク質の同定は、予定より遅れている。
1. MPC(+)肺癌の症例蓄積の継続。2. 腺癌に於けるvimentinのin vivo発現と、それと腫瘍分化度、増殖能と脈管侵襲などとの関連を検討する。3. ランダム免疫法抗体作製によるMPC特異タンパク質の同定を行う。4. MPC腺癌細胞株の樹立。術前生検材料でMPCが含まれることが判明された症例の手術材料を用いる細胞培養を行い、MPC細胞の株化を試みる。5. cDNAマイクロアレイを用い、MPC(+)腺癌とMPC(-)腺癌の網羅的遺伝子発現を解析。
プロテオーム解析試薬・器具類。タンクローン抗体作製試薬。Microdissection消耗品・DNA sequencing試薬・消耗品。細胞培養用試薬・免疫染色試薬・消耗品。cDNAマイクロアレイ解析。
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