研究課題
肺癌において腺癌は増加が顕著であり、肺癌全体の約半分以上を占める。肺腺癌のうち、線維・血管の芯を持たない腫瘍の微小乳頭成分(micropapillary component, MPC)を有するものは高頻度にリンパ管侵襲・転移を起こすため悪性度が高い。しかし、MPCのタンパク質発現・遺伝子異常のプロファイルは、依然解明されておらず、MPCの高悪性度に寄与する分子的基盤は未だに不明である。平成24~25年度の研究では、629症例の肺腺癌から101例(16.1%)のMPC腺癌が確認された。臨床病理学的検討では、non-MPC群に比べ、MPC群の脈管侵襲、リンパ節転移、術後病理病期、全生存期間と無再発生存期間が有意に悪く、MPC腺癌は独立した一つの高悪性度の臨床病理学的疾患単位であった。二次元電気泳動によるプロテオーム解析と免疫組織染色による半定量的検討では、non-MPC群よりMPC群におけるvimentinの発現が有意に高かった。また、MPC群のみにおいても、多変量解析でvimentinの高発現が予後不良因子であった。Vimentin高発現は、MPCのより低分化な性格ないし脱分化を反映している可能性がある。平成26年度では、ホルマリン固定・パラフィン包埋した同一腫瘍からMPCとnon-MPCをそれぞれmicrodissectionし、cDNAマイクロアレイ解析によるMPCにおいて発現が変動した遺伝子の同定を行った。MPCとnon-MPCに間に発現比率2倍以上に変動した遺伝子が千個以上検出され、両者の遺伝子発現プロファイルの違いが示唆された。しかし、microdissectionした組織から抽出した微量RNAの前増幅が不可欠であるため、これから展開するMPCの高悪性度に寄与する因子の選別には慎重な分析が必要である。
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