研究課題/領域番号 |
24590429
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
三富 弘之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (90181940)
|
研究分担者 |
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 広基性鋸歯状ポリープ / 大腸 / 鋸歯状腺癌 / 発癌経路 |
研究概要 |
Sessile serrated adenoma/polyp (SSA/P)は,DNA修復遺伝子メチル化やその蛋白発現低下,BRAF遺伝子変異等がみられ,APCやKras遺伝子変異が関与する通常のadenoma (AD)とは異なる病変である.近年,SSA/Pのendopointとされるserrated adenocarcinomaのRNAマイクロアレイ解析で,Patched (PTCH)及びEphB2の発現低下とHIF1αの発現亢進が報告されたが,その前癌病変での検討はない.そこで,SSA/P32病変,traditional serrated adenoma (TSA) 28病変,hyperplastic polyp (HP) 24病変,AD 21病変を対象とし,DNA修復関連蛋白(hMLH1,hMSH2,MGMT)発現,PTCH,EphB2,HIF1α蛋白発現及びそのメチル化,BRAF・Kras遺伝子変異について検討した.その結果,1) SSA/P,TSAは他のポリープよりもhMLH1,hMSH2,MGMT,EphB2の発現が低下していた.2) SSA/P,TSAでは他のポリープよりもHIF1αの細胞質発現の低下と核内発現の増強を認めた.3) TSAはSSA/P,HPよりもPTCH発現が亢進していたが,ADよりも低下していた.4) PTCH,EphB2遺伝子メチル化は各群の10%以下に認めた.5) BRAF遺伝子変異はSSA/P(70%),TSA(80%)に多く,Kras遺伝子変異はADのみ(40%)にみられた.以上より,SSA/P,TSAでのHIF1α,EphB2発現パターンはserrated adenocarcinomaと類似しており,SSA/PとTSAではRAS-RAF-MAPキナーゼ系活性化が共通してみられたが,PTCH発現には差異を認めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Serrated adenocarcinomaの症例が少なく,その前癌病変であるsessile serrated adenoma/polyp (SSA/P),traditional serrated adenoma (TSA)の解析はある程度進んだが,serrated adenocarcinomaに相当する癌化例が少なく,その蒐集が進んでいない状況である.
|
今後の研究の推進方策 |
1) SSA/Pの癌化例あるいはserrated adenocarcinoma例を,他施設も含めて積極的に症例を蒐集する予定である. 2) 症例が集積された後に,SSA/Pの癌化例あるいはserrated adenocarcinoma例のmicroRNA 20, 21, 93, 181b発現を検討し,平成21-23年度の基盤研究C(研究代表者)の課題で解析した前癌病変であるSSA/P,TSAのデータとの比較を行う予定である. 3) 1), 2)で十分な結果が得られなかった場合には,SSA/Pの癌化例あるいはserrated adenocarcinoma例のうち,各々3-5例ずつのmicroRNAのマイクロアレイ解析を行い,発現の差異のある候補となるようなmicroRNAを新たに探索する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
1) 1つのmicroRNAをtargetにすると1検体当たり約5千円を要するため,4つのmicroRNA解析を行うとすると,合計約20千円必要となる.これにmicroRNA抽出試薬代も加え,次年度の予算内で解析可能な症例数を決定する予定である. 2)microRNAマイクロアレイ解析には高度な技術と高額な専用解析装置を要するため,外部業者へ委託するが,1サンプル当たりの解析料が50千円であり,6-10例分の解析を行うとすると,合計300-500千円と必要なるため,1)に使用した研究費の残額で解析例数を決定する.
|