研究概要 |
濾胞性リンパ腫(Follicular lymphoma, FL)のcDNA microarrayとGene Set Enrichment Analysis (GSEA)の組み合わせから、アレイ上の遺伝子を含むパスウェイを変動の有意な順にリストアップし、これらの遺伝子が持つ発現値変動がアレイ全体の発現値変動のばらつきと比べてどの程度有意であるか、コンピュ-タ解析を行った。個々のパスウェイに含まれるグループ内遺伝子群の発現値が全体と比べて統計学的に有意である順に108の遺伝子をリストアップした。この中で陽性に傾ける遺伝子として、FOS, LTA, TNFSF12, TNFRSF4, LILRA4, IL17A, RUNX1, ICOS, CTLA4, CD40LG, PILRA, ICOSLG, CD247, IL4, CBL, MAPK8, TRADD、一方陰性に傾ける遺伝子としてIL10, TAF5L, LTBR, IFNG, TBX21, IL1R2, HMOX1, VTCN1, MDM2, FCGR2A, TNFSF18, INSがあげられた。 これらの抗原を同定する抗体を調べたところ10種類程度が検討可能であった。まず以下の4つで免疫組織化学的に解析した。まず正常リンパ組織における発現を解析したところ次の結果を得た。BTLA:リンパ濾胞胚中心の中と濾胞間に存在するT細胞に陽性。ときにマントル層もしくはマージナル層のB細胞にも陽性反応を認めたが胚中心内B細胞には陰性。HVEM:濾胞樹状細胞と濾胞間の樹状細胞の胞体内ゴルジ野にドット状に陽性。FOXP3:regulatory T細胞(Tregs)に陽性。PD-1:胚中心内のhelper T細胞に陽性。これらの分子を含めて、正常組織およびFLのパラフィン切片を染色し、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
GSEA法、cDNA microarray法で解析、抽出された新たに見出されたマーカーを引き続き、正常組織と濾胞性リンパ腫のパラフィン切片について解析する予定である。 また、初期の計画に基づき、本計画の2年目としてMIB-1 indexを解析する。リンパ腫細胞の増殖分画(MIB-1 index)を正確に評価するために、MIB-1(ki-67)の免疫組織化学を行った後、MIB-1 Labeling Index 自動計測ソフト「Gunma-LI」を用いて計測する。そのほか、濾胞性リンパ腫の診断に必要な既知のマーカーを解析する。CD3, CD5, CD10, CD20, CD30, BCL-2, BCL-6, MUN-1, P53, EBVのほか、濾胞樹状細胞のネットワークの程度についてCD21, CD23, CD35を合わせて検討し、上記のデータと比較検討する。 RT-PCRについても検討を行う予定である。 また、濾胞性リンパ腫からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に転化された症例についても症例を解析する予定である。
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