研究課題/領域番号 |
24590431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
倉田 厚 東京医科大学, 医学部, 講師 (10302689)
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研究分担者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 教授 (80251304)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胃癌 / マイクロRNA / 上皮間葉移行 / miR-200c / Zeb1 / Zeb2 / E-cadherin / tisssue array |
研究概要 |
本研究は低分化胃癌(スキルス胃癌)における上皮間葉移行に影響をおよぼすマイクロRNA(miRNA)を探索する目的で行われてきている。 平成24年度においては、まず、胃癌の組織標本からtissue arrayを作成し、他の癌において上皮間葉移行に関わることがよく知られているmiRNA-200cの発現を、in situ hybridization法にて検討した。また、胃癌培養細胞株を8種類購入し、これら培養株における、miRNA-200cおよびその標的として知られているZeb1, Zeb2, E-cadherinの定量をqPCR法にて行った。 その結果、組織標本上においては、高分化腺癌で発現の高かったmiRNA-200cが低分化腺癌では発現低下することが明らかになった。一方で、培養細胞においては、miRNA-200cの発現が高い株ではZeb1, Zeb2の発現が低く、E-cadherinの発現が高いこと、またmiRNA-200cの発現が低い株ではZeb1, Zeb2の発現が高く、E-cadherinの発現が低いことが判明した。miRNA-200cの発現が高い株は細胞形態が類円形であり、miRNA-200cの発現が低い株は細胞形態が紡錘形である傾向があった。 したがって、miRNA-200cはその標的を介して細胞形態に影響を及ぼすことが示唆され、それが胃癌組織における上皮間葉移行に現れ、ひいては分化度を規定する傾向があることが考えられた。 上記の研究成果の一部は、第101回日本病理学会総会(平成24年4月東京)、第4回日本RNAi研究会(平成24年8月広島)などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より、胃癌の上皮間葉移行に関わると推定されていたmiRNA-200cおよびその標的に関して、胃癌における発現がほぼ確認され、その発現の多寡が上皮間葉移行に関わる因子と相関する傾向が見出された。 まず、組織標本上においては、miRNA-200cのin situ hybridization法による発現は、胃癌の分化度と比例しており、分化度が高いほど細胞接着能が高いことより、miRNA-200cの低下が上皮間葉移行を促進して分化度を低下させていることが示唆された。が、免疫組織化学的に、miRNA-200cの標的であるZeb1, Zeb2の検出ははっきりした結果が得られず、平成25年度以降の課題として残った。 次に、培養細胞においては、qPCR法によりmiRNA-200cおよびその標的の定量が出来、miRNA-200cとその標的の発現量の高低が相関していた。が、miRNA-200cの発現の高低は、由来組織の分化度とは相関しておらず、上記の組織標本の結果に合致していなかった。しかしながら、miRNA-200cの発現の高低は、細胞形態とよく相関しており、上皮間葉移行に関わるものと推察された。
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今後の研究の推進方策 |
miRNA-200cおよびその標的であるZeb1, Zeb2、さらにはE-cadherinの、組織標本上での発現解析に関して:高分化、中分化、低分化腺癌おのおの約30例ずつを含む胃癌のtissue arrayは作成済みであり、miRNA-200cの発現も検討済みである。免疫組織化学的に、Zeb1, Zeb2, E-cadherinの発現を検討するため、おのおの抗体を複数ずつ購入し、適切な条件下で施行していく。 miRNA-200cおよびその標的の培養株での発現解析に関して:8細胞を購入済みであり、これら細胞におけるmiRNA-200cとその標的の発現量もqPCRで検討済みである。今後は、miRNA-200c発現の低い株にmiRNA-200cのオリゴ核酸をトランスフェクションさせ、ないしはmiRNA-200c発現の高い株にmiRNA-200cのアンタゴ核酸をトランスフェクションさせ、miRNA-200cないしはその標的の変動を調べる。また、ウエスタン・ブロット法にて、miRNA-200cの標的蛋白の検出を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、免疫組織化学的検索のための抗体、トランスフェクションのための核酸、qPCRのための消耗品(プライマー等)、ウエスタン・ブロット法のための実験迅速化機器(転写装置)および消耗品(各種2次抗体および発色試薬)を購入していく。
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