研究実績の概要 |
神経芽腫細胞のsphere形成能と分化能の解析 Low attachment 6well dishの1wellあたり、神経芽腫細胞SK-N-SH 500個を、bFGF、EGFを添加したDMEM/F12培養液からなるneural stem cellの培養条件下で培養すると、10.7±2.7個(2.14±0.054%, n=24)のsphere形成を認めるが、96well dish にFACSでsingle cellに分取した実験系ではsphere形成は得られなかった。蛍光抗体法による観察では、p75、CD24、CD44の各表面マーカーに染色される細胞を認める。Single cellによる解析はできなかったが、セルソーターで各表面マーカーの陽性陰性で分画した計8分画を分取し、マーカーの変化を検討した。各分画でマーカーの陽性、陰性は入れ替わり、SK-N-SH細胞で知られている形態変化 (transconversion) を反映しているものと思われたが、p75(-), CD24(+), CD44(-)の分画だけは、表面マーカーの性質が変化せず、他の成分が出現しなかった。このことから、この分画は分化の最下位に位置するものと考えられた。この分画は、形態的にN-typeに相当し、SK-N-SHのsubcloneであるSK-N-SY5Yもこの分画に相当する細胞である。N-typeはS-typeに比べて増殖が速く、過去の検討から、SK-N-SHをクローン化して得られる細胞のうち98%がN-typeである。適切に培養細胞を継代しないと、p75(-), CD24(+), CD44(-)のみの細胞で占められる。 SK-N-SH細胞表面マーカーの検討から、神経芽細胞種においては、ある一定の分化階層を持ちながらも、分化階層の最も下位にある腫瘍性増殖に傾き、階層に乱れが生じている状態にあると考えられた。
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