大動脈瘤の罹患患者は近年増加の一途をたどっている。しかし、現状では手術やカテーテル治療といった侵襲的な治療法しかなく、薬物治療の開発が待たれている。大動脈瘤の形成には粥状動脈硬化が背景にあることが多いが、病態の発症や進展の機序は不明な点が多い。そこで我々は手術時に得られた大動脈瘤壁の病理組織検体とマウスを用いた大動脈瘤モデルを用いて、大動脈瘤の形成における鉄代謝の関与を検討した。 大動脈瘤壁には鉄の沈着が高度に認められ、マウスモデルにおいては鉄を除去した餌による飼育で大動脈瘤の形成が予防された。生体内では鉄は必須であるが、過剰な鉄の存在は大動脈瘤の進展に関与している可能性が示唆された。
|