研究課題/領域番号 |
24590437
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 鮎子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20419823)
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研究分担者 |
辻村 亨 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20227408)
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / CD146 |
研究概要 |
悪性胸膜中皮腫と反応性中皮の鑑別診断においてはCD146免疫染色が有用である。また、早期症例に着目して解析すると、胸膜表層に配列する異型中皮細胞においてもCD146の発現が認められ、初期病変を検出する早期診断マーカーとしての有用性が示唆された。CD146は細胞接着分子として機能する膜貫通性糖タンパク質であるが、可溶型CD146(sCD146)も産生されることが知られている。可溶型タンパク質は、有用な診断バイオマーカーとなる可能性があるため、中皮腫細胞においてCD146が高発現することに着目して胸水中のsCD146濃度を調べると、非悪性疾患と比較して悪性胸膜中皮腫において有意に高値を示した。そこで、悪性胸膜中皮腫の組織検体における膜型CD146の発現と、胸水sCD146濃度の相関を調べた。その結果、膜型CD146が高発現する中皮腫症例の胸水中ではsCD146が高値を示し、両者の間に有意な相関性が認められた。胸水中に検出されるsCD146が、中皮腫細胞における膜型CD146の発現を反映することを確認するため、腫瘍組織や胸水中に含まれる細胞から樹立した中皮腫培養細胞株を用いて、培養上清中に産生されるsCD146を調べた。その結果、培養上清中のsCD146は、コントロールの正常中皮細胞ではほとんど検出されなかったのに対して、膜型CD146を発現する中皮腫細胞株においては、その発現量と相関して有意に高値を示した。胸水sCD146濃度は、中皮腫細胞におけるCD146発現と相関する指標であり、早期診断において有用なバイオマーカーであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性胸膜中皮腫症例の病理組織標本を用いてCD146免疫染色を行い、中皮腫細胞における膜型CD146の発現と、胸水中sCD146濃度の相関性を示した。また、中皮腫細胞株の培養上清中に検出されるsCD146を解析することにより、中皮腫細胞における膜型CD146の発現を反映して、sCD146の産生が増加することが示唆された。当初の研究実施計画に沿って、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
実施計画に沿って研究を進める。これまでに得られた成果をもとに、悪性胸膜中皮腫の早期診断マーカーとしてのCD146の有用性を確立するとともに、悪性胸膜中皮腫の手術症例を対象として、手術検体におけるCD146発現を調べる。術後生存期間との関連を解析することによって、予後因子としての有用性を検証する。また、悪性胸膜中皮腫細胞株を用いて、CD146の生物学的機能の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに得られた成果に基づいた研究を引き続き行ったため、すでに準備した試薬や、所有している機器を使用できる実験内容が含まれた。そのため、新規に購入する試薬等は、当初の予定以下で研究を行うことが可能であり、次年度使用額が生じた。 従来の研究計画に従うとともに、平成25年度に得られた研究成果を発展させる研究を行い、次年度使用額を有効に使用する。
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