ＮＫＧ２Ｄリガンドのがん抗体療法における役割解明とこれを用いた治療効果予測

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24590441
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 松野 吉宏 北海道大学, 大学病院, 教授 (00199829)
• 研究分担者: 畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (30589924)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: NKG2Dリガンド / 分子標的治療 / ADCC活性

研究実績の概要

本研究では，がん細胞おいて多様な発現を示すNK細胞活性化因子NKG2Dリガンド（NKG2DL）に着目し，[1]抗体治療が標準治療となっているがん種においてNKG2DL発現と臨床病理学的因子との関係性を明らかにし，[2]抗体治療薬を用いた治療において，治療効果予測が可能かについて前向き観察研究を行うとともに，[3]この治療効果予測に関わるメカニズムを解明することを目的としており，H25年度は，ヒト乳癌組織およびヒト乳癌細胞株を用いてNKG2DL発現と腫瘍ストレス関連分子との関連性の検討した．
本年度は，Rituximabを用いた抗体治療が標準治療となっているびまん性大細胞型B細胞リンパ腫（DLBCL）の組織マイクロアレイ（TMA）を作製し，NKG2DL発現について免疫組織化学的（IHC）解析を行い，NKG2DL間の発現比較および臨床病理学的因子やPD-L1およびMHC Class I発現との関連性について検討した．IHC検討は，バリデーションを行った特異抗体を用いた（Fujita H et al., 2015）．染色判定は4段階（Score 0～3）にて評価し，Score 2およびScoreを陽性とした．NKG2DL発現のクラスター解析では，NKG2DL間の発現比較ではULBP1，ULBP2，ULBP5間でそれぞれ有意な相関を認めた．NKG2DLと臨床病理学的因子間には，ULBP1，ULBP2およびULBP5とBCL6の発現に有意な関連性を認めた．またPD-L1低発現群に比較し高発現群で有意にULBP1の陽性率が高く（21%および47%，p<0.003），PD-L1とULBP1発現との関連性が示唆された．

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究目的の達成のため，3年目にあたる平成26年度は，①DLBCLのTMAを作製し，NKG2DL発現について免疫組織化学的（IHC）解析を行ったが，②治療効果と関係のあったNKG2DL 分子のADCC 活性への関与の証明については，解析準備を行うに留まった．
①においては，IHC解析は予定通り進めることができたが，一方で臨床データ収集に時間を要したため，予後解析等を完了できなかった．
②においては，①の影響を受け，準備するに留まった．
今年度の研究の進捗については，検討で遅れが見られたことから，自己点検による評価の区分を(4)とした．

今後の研究の推進方策

研究期間の延長を行った本年度は，上記①，②について検討を完了させ，NKG2DLによる治療効果予測因子の可能性について明らかにする．
最終的にこれら結果をとりまとめ，成果発表を行う．

次年度使用額が生じた理由

とくに上記②のNKG2DL 分子のADCC 活性への関与の証明に関する検討の遅延が発生し，これを次年度に行うこととしたため，次年度使用額が生じた

次年度使用額の使用計画

次年度においても主に物品費に充てる予定であり，費目別には以下のように計画している．【物品費】消耗品として免疫組織化学研究用試薬，細胞培養用試薬，ウエスタンブロッティング解析など生化学研究に使用する試薬を購入する予定である．【旅費】情報収集や成果発表のため国内外の学会へ参加予定である．【人件費・謝金】該当なし．【その他】本研究で得られた成果を，学会誌等へ投稿することを予定している．
研究推進にあたっては，計画に基づき実験を進めていき，研究費を有効活用したい．

研究成果

• [雑誌論文] Immunohistochemical validation and expression profiling of NKG2D ligands in a wide spectrum of human epithelial neoplasms. (2015)
  • 著者名/発表者名: Fujita H, Hatanaka Y, Sutoh Y, Suzuki Y, Oba K, Hatanaka KC, Mitsuhashi T, Otsuka N, Fugo K, Kasahara M, Matsuno Y.
  • 雑誌名: J Histochem Cytochem 巻: 63 ページ: 217-227
  • DOI: 10.1369/0022155414563800
  • 査読あり
• [雑誌論文] Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation following reduced-intensity conditioning for mycosis fungoides and Sezary syndrome. (2014)
  • 著者名/発表者名: Shiratori S, Fujimoto K, Nishimura M, Hatanaka KC, Kosugi-Kanaya M, Okada K, Sugita J, Shigematsu A, Hashimoto D, Endo T, Kondo T, Abe R, Hashino S, Matsuno Y, Shimizu H, Teshima T.
  • 雑誌名: Hematol Oncol 巻: Epub Ahead of Print ページ: -
  • DOI: 10.1002/hon.2162
  • 査読あり
• [雑誌論文] Prognostic biomarkers in patients with localized natural killer/T-cell lymphoma treated with concurrent chemoradiotherapy. (2014)
  • 著者名/発表者名: Yamaguchi M, Takata K, Yoshino T, Ishizuka N, Oguchi M, Kobayashi Y, Isobe Y, Ishizawa K, Kubota N, Itoh K, Usui N, Miyazaki K, Wasada I, Nakamura S, Matsuno Y, Oshimi K, Kinoshita T, Tsukasaki K, Tobinai K.
  • 雑誌名: Cancer Sci 巻: 105 ページ: 1435-1441
  • DOI: 10.1111/cas.12526
  • 査読あり
• [雑誌論文] Reproducibility of histopathological diagnosis in poorly differentiated NSCLC: an international multiobserver study. (2014)
  • 著者名/発表者名: Thunnissen E, Noguchi M, Aisner S, Beasley MB, Brambilla E, Chirieac LR, Chung JH, Dacic S, Geisinger KR, Hirsch FR, Ishikawa Y, Kerr KM, Lantejoul S, Matsuno Y, Minami Y, Moreira AL, Pelosi G, Petersen I, Roggli V, Travis WD, Wistuba I, Yatabe Y, Dziadziuszko R, Witte B, Tsao MS, Nicholson AG.
  • 雑誌名: J Thorac Oncol 巻: 9 ページ: 1354-1362
  • DOI: 10.1097/JTO.0000000000000264
  • 査読あり
• [雑誌論文] A multicentre phase II study of vorinostat in patients with relapsed or refractory indolent B-cell non-Hodgkin lymphoma and mantle cell lymphoma. (2014)
  • 著者名/発表者名: Ogura M, Ando K, Suzuki T, Ishizawa K, Oh SY, Itoh K, Yamamoto K, Au WY, Tien HF, Matsuno Y, Terauchi T, Yamamoto K, Mori M, Tanaka Y, Shimamoto T, Tobinai K, Kim WS.
  • 雑誌名: Br J Haematol 巻: 165 ページ: 768-776
  • DOI: 10.1111/bjh.12819
  • 査読あり
• [学会発表] 自己免疫性疾患患者に生じたリンパ増殖性疾患63例の臨床病理学的検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 畑中佳奈子、藤本勝也、野口寛子、高桑康成、畑中豊、松野吉宏、Lymphoma Clinico-Pathologic Conference
  • 学会等名: 第104回日本病理学会総会
  • 発表場所: 名古屋国際会議場（名古屋市）
  • 年月日: 2015-04-30 – 2015-05-02
• [学会発表] 悪性リンパ腫の病理 (2015)
  • 著者名/発表者名: 松野吉宏
  • 学会等名: 第9回Tokyo FDG-PET Imaging Conference
  • 発表場所: ベルサール神保町（東京都）
  • 年月日: 2015-02-21 – 2015-02-21
  • 招待講演
• [学会発表] コンパニオン診断薬; 開発及び評価の考え方と課題 (2014)
  • 著者名/発表者名: 松野吉宏
  • 学会等名: PMDAワークショップ
  • 発表場所: 全社協・灘尾ホール（東京都）
  • 年月日: 2014-09-01 – 2014-09-01
  • 招待講演
• [学会発表] 眼内悪性リンパ腫および鑑別疾患における硝子体液を用いた病理診断の有用 (2014)
  • 著者名/発表者名: 菅野 宏美，藤田 裕美，畑中 佳奈子，田川 義晃，南場 研一，三橋 智子，松野 吉宏
  • 学会等名: 第103回日本病理学会総会
  • 発表場所: 広島国際会議場（広島市）
  • 年月日: 2014-04-24 – 2014-04-26