研究課題
胃がんは、同一組織内に分化型と未分化型がんが混在するなど、多様な組織形態を示している。組織内多様性に関しては国内外で注目されているが、その分子メカニズムは未だに不明な点が多い。エピジェネティックな異常は細胞分化や腫瘍の発生、増殖において重要な役割を果たしている。本研究では、組織内多様性に着目し、未分化型胃がん発症マウスとヒト胃がんを用いて遺伝子のエピジェネティックな変化を検討した。当教室で作成したp53とE-cadherinダブルノックアウトマウスは100%スキルス胃がんを発症する。このマウス胃がん組織より、細胞形態が異なる2種類の細胞株の樹立に成功した。網羅的遺伝子解析の結果、これら2種類は転写因子Twist1発現が異なっていた。また、脱メチル化剤などのエピジェネティック阻害剤を処理するとTwist1発現が変化し、DNAメチル化やヒストン修飾状態も変わることが明らかになった。また、転写因子Sp1のTwist1遺伝子への結合パターンがTwist1発現に強く一致した。本研究により、Twist1発現にはDNAメチル化、ヒストン修飾およびSp1の複合的メカニズムが密接に関わることが明らかになった。免疫組織化学染色を行うとTwist1はマウス胃がん組織内で発現パターンが異なっており、その違いにこれら複合的エピゲノム変化が関与する可能性が推測された。次に、ヒト胃がんでヒストン修飾関連酵素SET7/9の発現を調べた。その結果、約40%の胃がんでSET7/9発現低下を認めた。機能解析により、SET7/9ががん抑制的な役割を示すこと、およびその標的遺伝子として複数の細胞分化に関わる遺伝子が単離された。SET7/9発現は同一胃がん組織内でも発現陽性部分と陰性部分が認められたため、今後、SET7/9と組織内多様性との関連性を調べる必要があると考えている。
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Oncotarget
巻: 7 ページ: 3966-3983
doi: 10.18632/oncotarget.6681
PLOS ONE
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doi: 10.1371/journal.pone.0145630. eCollection 2015