研究課題/領域番号 |
24590445
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
三浦 克敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20173974)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波顕微鏡 / 組織弾性 / 線維化 / 肉芽腫 / 壊死 / 硬癌 / 髄様癌 / デジタルイメージング |
研究概要 |
実際の病理組織標本を用いて走査型超音波顕微鏡が病変をいかに描出できるか。どのような工夫で精度の高い画像が得られるかを研究した。今年度は主に肺とリンパ節の観察結果をまとめ、実験病理と一般科学を扱う国際誌に投稿し、発表した。 肺については、肺の中の諸成分を区別して、光学顕微鏡に匹敵する画像化に成功した。正常な肺はもとより、肺線維症、アミロイド沈着、癌の浸潤像を描出した。リンパ節についても、びまん性、局所性の炎症性または腫瘍性病変の描出が可能であった。 これまでの結果から、柔らかな嚢胞性の壊死は音速が遅く、より硬い凝固壊死、肉芽腫、線維化組織の音速は早くなる傾向が得られた。音速は間質の線維化や細胞密度を反映し、これらが密になるほど音速はより早かった。癌の中で、硬癌と髄様癌では統計学的にも有意(危険率1%)に差が認められた。 光学顕微鏡と比べ、超音波顕微鏡は以下の点ですぐれていた。(1)各々の病変の硬さを反映する画像化ができる。(2)デジタル化された各部位の音速は統計学的比較が可能である。(3)画像は特殊染色を必要とせず、数分以内に手に入れることができる。(4)臨床で使われるエコー像と超音波顕微鏡像は比較可能で、エコー画像の理解を深めることができる。 精度の高い画像の描出には通常の光学顕微鏡用の切片よりも厚い、10ミクロンで平坦な切片を必要とした。プローブの周波数により、解像度の限界があり、今回使用した120mHzのプローブでは、かろうじて細胞一個が識別できる程度であった。 未固定の凍結切片も可能であったが、平坦な均一な標本の作製の難しさと過去に蓄積された多数の標本の活用から、ホルマリン固定パラフィン包埋切片を使って光学顕微鏡に匹敵する美しい画像化ができた。デジタル化された各病変間の音速が統計学的に比較でき、触診によって経験的に知られる病変の硬さを数値化して表現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の病理標本を使って走査型超音波顕微鏡による画像化に成功している。 より、精度の高い、光学顕微鏡に匹敵する画像化を可能にするためのいくつかの試みが試され、美しい画像化が得られている。 さらに、成果を国際誌に2編既に発表している。 また新年度においても、新しい成果を国内外の関連学会で発表する予定が決まっている。 超音波顕微鏡の研究会の立ち上げに協力し、副会長に就任し、第二回の会の開催が決まっている。
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今後の研究の推進方策 |
超音波顕微鏡を用いて特異的部位や病変の描出が可能であるか。標識抗体や発色基質をいくつかすでに試してみたが、まだ、音速に大きな変化をもたらす方法の発見に至っていない。音速を効果的に変化させる物質や方法をいくつか試してみたい。 光学顕微鏡に用いられる特殊染色の中で音速に変化をもたらす染色法を発見してみたい。 400MHzのトランスデューサーを購入し、分解能を高くすることで、細胞1つレベルでの観察を試みたい。 超音波顕微鏡に関心のある研究者と研究会で交流し、情報の交換を進めたい。今年度は東京での開催が決まっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
400Hzトランスデューサー 120万円を購入し、今まで不可能であった、細胞レベルの観察を行う。特に血液を用いた観察や細胞診への応用を試みる。 病理や顕微鏡の国際学会や研究会に積極的に参加し、超音波顕微鏡の普及に努め、かつ新しい研究アイデアを産む機会を増やしたい。
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