研究課題/領域番号 |
24590446
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
塚本 善之 大分大学, 医学部, 助教 (00433053)
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研究分担者 |
柳原 五吉 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 特任研究員 (20158025)
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キーワード | 胃癌 / 20番染色体 |
研究概要 |
診断技術の進歩により、初期に発見される早期胃癌の治療成績は向上したが、悪性度が高まった進行胃癌の治療成績は良好でない。この原因として進行胃癌に対して外科治療以外に効果的な補助療法が確立されていないことが挙げられる。近年、癌発症のメカニズム解明が大きく進み、癌は遺伝子異常の蓄積によって引き起こされる遺伝子病であることが明らかとなってきた。そしてその異常を標的とする分子標的治療が急速に進歩している。これまで多くの研究グループが胃癌の網羅的遺伝子異常解析を実施し、多数の標的候補分子を同定してきた。しかし、未だに胃癌の効果的な分子標的治療は確立されていない。この原因としては、多数の標的候補の中から実際に胃癌の悪性化を促進させる遺伝子異常を選ぶのが困難であることが考えられる。我々はこの問題点を解決するために、これまでに早期胃癌と進行胃癌のゲノム異常を比較し、胃癌の進行に関わるゲノム異常を探索してきた。その結果、胃癌では染色体20q13領域のゲノム増幅が早期胃癌と比較し、進行胃癌で高頻度であることを発見した。本課題では20q13領域にコードされ、胃癌で過剰発現する8遺伝子についての機能を明らかにすることを目的とする。 昨年度は20q13領域に存在する8つの候補遺伝子が胃癌組織で過剰発現することを発見した。また、培養細胞を用いた解析では、この8遺伝子の中でDDX27, CEBPBを発現抑制することで癌化能の低下を認めた。この結果はDDX27, CEBPBが胃癌細胞の生存に重要な役割を果たしていることを示唆する。本年度は、引き続き培養細胞を用いて、DDX27が細胞周期に関与することを明らかにした。さらに、実験動物を用いた機能解析のための予備実験を行い、MKN74, 44As3, GSU, SH101P4が免疫不全のヌードマウスへ移植可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は染色体20q13領域にコードされた8遺伝子(CSE1L, DDX27, B4GALT5, ZNF313, Kua, UBE2V1, CEBPB)が胃癌と関与するか否か明らかにすることを目標としている。本年度までで、培養レベルながらDDX27, CEBPBが胃癌細胞で生存に関与することを明らかにしてきた。このように、来年度の実験動物を用いた解析につながる結果が得られているので、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
我々は胃癌の進行に関わる遺伝子異常を同定し、それに対する分子標的治療薬を開発し、胃癌治療に役立てたいと考えて研究を行っている。本課題では胃癌の進行に関わる遺伝子異常として染色体20q13領域を候補に挙げ解析を行う。これまでに20q13領域にコードされる8遺伝子(CSE1L, DDX27, ZNFX1, B4GALT5, ZNF313, Kua, UBE2V1, CEBPB)が胃癌で過剰発現することを明らかにしてきた。さらに、培養胃癌細胞株においてこれら8遺伝子の発現を抑制することでDDX27, CSE1Lが胃癌の生存に関わることを明らかにした。今後はこれら2遺伝子の機能解析を詳細に行い、まず治療標的としての可能性を探索する。さらに、実験動物への胃癌培養細胞株移植実験により、実際に治療標的となり得るか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に培養レベルだけでなく実験動物レベルでの解析も行う予定だったが、移植可能な培養胃癌細胞株を選ぶための実験に時間を費やした。そのため、候補遺伝子を絞り込むための実験動物レベルでの解析が来年度に延期せざるを得なくなったため、助成金を次年度に回した。 本年度購入予定であった、培養胃癌細胞株を移植するための免疫不全マウスを購入するために使用する。
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