研究課題/領域番号 |
24590447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
東 美智代 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60315405)
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研究分担者 |
米澤 傑 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175002)
横山 勢也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20569941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病理学 / 膵胆道腫瘍 / ムチン抗原 / 予後因子 / MUC1 / MUC4 / MUC16 |
研究概要 |
我々が提唱した膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)ならびに粘液産生胆管腫瘍(MPBT)の新分類において重要なポイントとなるMUC1とMUC2、膵胆管系癌の予後不良因子であるMUC4、膵胆管系の前癌性病変から広く発現して「早期マーカー」としての意義があるMUC5AC(胃表層型分泌ムチン)、について遺伝子発現機構を明らかにしてきた。また、MUC16が肝内胆管癌において予後不良因子であることも見いだした。一方、各種ムチンの遺伝子発現にDNAのメチル化、ならびに、ヒストンのアセチル化やメチル化といったエピジェネティクス機構が深く関与していることを解明してきている。エピジェネティクスの分野においても、従来までのDNAメチル化検出限界5%を超える0.1%の感度を有する新規検出法を開発した(現在、特許出願中 : PCT/JP2011/060339)。 以上のこれまで蓄積してきた知見を応用し、各症例から得られる膵液や胆汁の細胞診標本や、針生検標本(EUS-FNA)、手術摘出標本などの病理組織を用いて、これらムチン抗原の発現状況を検討している。すなわち、多数の膵胆管系腫瘍組織において免疫組織化学やin situ hybridizationによりムチン抗原発現状況を比較・検討し、組み合わせ評価を行っている。加えて、膵胆管系腫瘍の情報を含んで排出されてくる膵液や胆汁の中のムチン性糖蛋白、ムチンの発現に関連するmRNA、そのmRNA発現の制御に関わっているムチン遺伝子のプロモーター領域におけるエピジェネティクス変化を総合的に検索したデータを一例ごとに蓄積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で膵腫瘍は、浸潤性膵管癌の切除例が50例、膵管内乳頭粘液性腫瘍が50例程度蓄積している。そのうち膵液あるいは胆汁の解析が終了している症例は20例弱ずつであるが、膵液あるいは胆汁のみの症例も同数程度ある。それらを基に膵液あるいは胆汁の解析で、どれほどの正確さで膵胆管系腫瘍の質的診断が可能であるかの確認を行っている過程である。 エピジェネティクスの分野において、従来までの検出限界5%を超える0.1%の感度を有する新規DNAメチル化検出法(現在、特許出願中 : PCT/JP2011/060339)を開発した。この解析法により、膵液や胆汁液などの分泌液を用いたMUC1、MUC2、MUC3A、MUC4、MUC5AC、MUC17の詳細なDNAメチル化解析を行えるようになった。この解析法を用いて主にMUC1、MUC2、MUC4、MUC5ACの詳細なDNAメチル化解析を行っているが、現時点での解析では、特異度あるいは感度とも比較的高率の結果を示し、画像等の臨床所見を加味すると非常に高い確率で術前診断が行える可能性を示している。 また、MUC1の特定部位を鮮明に免疫染色することができる新規抗体(国内・国際特許出願中)を開発した。この抗体を用いて既に収集してある膵腫瘍の解析を行っており、種々の膵腫瘍におけるMUC1の発現機序の解明・進展に寄与することが期待されます。
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今後の研究の推進方策 |
膵胆管系腫瘍患者の、術前あるいは摘出検体から膵液や胆汁を採取する。また比較対象として、非腫瘍性疾患(膵胆管合流異常や胆管炎など)患者から得られた組織も採取する。採取後、 mRNA を抽出し高感度の定量Real-time PCR法を用い、各種ムチンコア蛋白のmRNAに関して解析を行う。また、ELISAやWestern blotting 等も行い、ムチン蛋白の検出も試みる。同時にDNA抽出も行い、次項のメチル化状態の検討に用いる。既に数例の解析を行い、全例ではないがmRNAあるいはDNAの抽出ならびに解析に成功している。また培養細胞上清からのmRNA検出を行っており、陽性あるいは陰性対象として使用している。 今後も、前年度に引き続き、検体の採取・解析を行なう。Heterogeneityのあるヒト臨床検体を扱うので、目標50症例以上、最低でも20症例は必要と考える。 本研究では、臨床検体を用いるので、その不均一性が解析の妨げと成ることが予想される。そこで、培養細胞や比較的多くの量が採取しえた臨床検体等を用いて、試薬や実験方法等を種々の方法を検討し、最適な条件設定を模索している。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床検体の解析に用いる分子生物学試薬や免疫組織学試薬が主たる使用である。それらの資料の解析や保存等を行う補助の人件費・謝金も必要である。更に多くの資料解析には、それらのデータを保管・管理する専用のコンピューター等が必要となる可能性もある。
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