研究課題
難治性腫瘍である膵胆管系腫瘍であるが、早期発見・早期診断ができれば有効な治療を積極的に行い予後の改善は見込まれる疾患群である。本研究では、膵胆管系腫瘍の予後因子であるムチン抗原発現の検討を基盤とし、ムチン抗原発現解析を腫瘍の質的診断や早期診断に応用することを目的とした。今年度までで以下の事を明らかにした。1. 我々が開発した新規高感度DNAメチル化解析法(MSE法)を用いて、膵液中に含まれるDNAのメチル化状況を解析することで、膵腫瘍組織型予測が可能であることを報告した。この方法を用いて解析したところ、非常に高い感度・特異度を有していることが判明した(膵癌: 感度80%、特異度87%、腸型IPMN: 感度88%、特異度100%、胃型IPMN: 感度77%、特異度88%)。以上の結果から、MSE法は膵腫瘍の早期診断・悪性度鑑別に臨床応用できる可能性を示した。2. 超音波内視鏡下での針生検検体でのムチン発現状況を検討し、臨床病理学的因子と関連があることを見いだした。3. 膵胆管系癌のムチン発現様式との比較対照を行うために、小腸癌におけるムチン発現の臨床病理学的意義を解明した。小腸癌60例の解析では、MUC1, MUC5AC, MUC16発現が予後不良因子であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
新規に開発した高感度DNAメチル化解析法(MSE法)によるヒト臨床検体の膵液を用いた解析では、膵腫瘍の組織型推定に有用であるとの知見が得られ、論文も受理されている。また超音波内視鏡下での針生検検体でのムチン発現状況の解析も同時に行っており、概ね計画通りに進展している。
MSE法を用いた解析では、解析結果と実際の病理組織型とに相違があった症例が少なからず存在している。それらの症例を重点的に検証し、その相違を引き起こした原因の究明を行っていく。また膵液のみならず、胆汁等の解析も推し進めていく。また生検検体を用いた解析も症例が蓄積しており、それらの結果を病理学的因子のみでなく、臨床的因子も含めて総合的に判断していく。
実験補助員の雇用等を予定していたが、手技等で満足しうる人材を確保出来ず、予算を使用することが出来なかった。実験に関しては、共同実験者並びに実験協力者により、概ね滞りなく遂行している。今年度は、その能率を上げるために、少々割高とはなるが、キット等を使用していく。また研究成果を発表するための旅費や投稿料等に重点的に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~byouri2/