研究課題
平成24年度に行ったERO1-αに対するshort hairpin RNAを用いて、ERO1-αの発現を抑制した結果、ヒトおよびマウス乳がん細胞株の腫瘍増殖および肺転移抑制を認めたことから、ERO1-αの発現あるいは機能阻害は、抗腫瘍効果を示すことが予想された。そこで、平成25年度は、北海道大学薬学研究院の前仲 勝実教授との共同研究で、ERO1-αの低分子阻害剤をin silicoおよびin vitroのassayを用いてスクリーニングを精力的に行っているところである。これに加え、臨床応用を念頭に置き、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231を用いて、ERO1-αノックダウン細胞株を樹立し、検討を行っている。興味深いことに、ERO1-αノックダウン細胞株では、がん幹細胞画分が減少し、上皮間葉転換も消失して、充実性増殖を示すような形質転換を示した。これに伴い腫瘍増殖は明らかに抑制された。この結果は、ERO1-αは腫瘍増殖に非常に重要な役割を果たしていることを示すものであり、がんの治療標的として非常に有望である。またERO1-α由来のがん抗原ペプチド同定については、HLA-A24トランスジェニックマウスに候補ペプチドを免疫することで、細胞傷害性T細胞を誘導可能なペプチドを3つに絞り込こんだ。これらの候補ペプチドが、ヒト末梢血においても細胞障害性T細胞を誘導可能かにつき、検討を進める。
2: おおむね順調に進展している
ERO1-αの低分子阻害剤の同定は、現在、共同研究先と集中的に実施中である。最も重要な研究テーマであり、精力的に進めていく。本年度は、ERO1-αが、がん幹細胞形質発現に重要な、薬剤排泄トランスポー夛であるABCG2の発現を翻訳後修飾のレベルで、制御していることを明らかにした。今後の低分子阻害薬の同定が非常に期待される。またERO1-α由来のがん抗原ペプチド同定については、HLA-A24トランスジェニックマウスに候補ペプチドを免疫することで、細胞傷害性T細胞を誘導可能なペプチドを3つに絞り込んでおり、おおむね順調に進展していると考えている。
ERO1-αの発現抑制により、腫瘍増殖が抑制されることを乳がん、膵臓がん、および大腸癌の細胞株を用いて明らかにすることができた。この事実は、ERO1-αに対する低分子阻害剤が新規の分子標的治療薬として非常に期待が持たれることを示す。そこで、本年度はin silicoおよびin vitroでのスクリーニングに加え、siRNAを用いた分子標的薬の開発を進めていく。具体的には、腫瘍へのターゲッティング目的に修飾リポソームを種々作製し、siRNA封入し、in vitroでの腫瘍特異的なsiRNAの取り込みを評価し、その後in vivoの検討を行うことを計画している。またERO1-α由来のがん抗原ペプチド同定については、候補ペプチドが、ヒト末梢血においても細胞障害性T細胞を誘導可能かにつき、検討を進める。さらに最も免疫原性の高い抗原ペプチドを同定し、HLA-A24トランスジェニックマウスに我々が樹立したHLA-A24 トランスジェニックマウス由来の腫瘍細胞を接種し、がんワクチン効果を検討する。最終的には、ERO1-α阻害剤とERO1-α由来抗原ペプチド免疫による複合治療の効果を検討し、臨床応用への基盤とする。
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