研究課題
本研究において治療抵抗性を示すがん幹細胞に対する免疫応答の解析を進めている。これまで、我々は細胞傷害性T細胞(CTL)ががん幹細胞を有効に傷害することを示してきた。当該年度において、我々が同定した新規がん幹細胞抗原分子、DanJ homolog, superfamily B, member 8 (DNAJB8) にコードされる、CTLが認識する抗原ペプチドの同定に成功した (Cancer Sci 2014)。すなわち、DNAJB8のアミノ酸配列を元に、HLA-A24結合モチーフを有するペプチドをデザイン、合成した。当該合成ペプチドを用いて、HLA-A24陽性健常者末梢血から分離した CD8 陽性T細胞を複数回刺激した。その結果、DNAJB8ペプチド特異的に反応するCTLクローンの樹立に成功した。DNAJB8ペプチド特異的CTLクローンは、ヒト大腸がん細胞株 (HT29) からSide Population (SP) 細胞として分離されたヒト大腸がん幹細胞を有意に認識、傷害した。また、HT29を移植した免疫不全マウスにDNAJB8 特異的CTLクローンを移入すると、有意な抗腫瘍効果を認めた。これらの結果は、本研究課題であるヒトがん幹細胞特異的免疫療法の臨床応用への橋渡しの第一歩といえる。すなわち、HLA-A24拘束性DNAJB8由来抗原ペプチドは、がん幹細胞標的ペプチドワクチン療法に直接応用可能と考えられるからである。
2: おおむね順調に進展している
ヒトがん幹細胞標的免疫療法の臨床応用を現実化する上で、ヒトがん幹細胞抗原分子にコードされる抗原ペプチドの同定が必須である。以前の我々の検討では、がん幹細胞関連抗原であるDNAJB8が免疫原性を示し、免疫療法の標的となりうる可能性をマウス遺伝子ワクチンの実験系で示した(Cancer Res 2012)。しかしながら、DNAJB8にコードされるヒトHLAに提示される抗原ペプチドは不明であった。本研究期間内に、DNAJB8にコードされる抗原ペプチドの同定および、ヒト腫瘍細胞移植免疫不全マウスにおける抗腫瘍効果を確認出来た事により、臨床応用への第一歩を踏み出せたと考える。
現在、がん幹細胞関連抗原分子として、DNAJB8およびOR7C1の2分子の解析を進めている。DNAJB8にコードされる抗原ペプチドの同定に成功した為、今後はDNAJB8抗原ペプチドに対する免疫応答が、がん患者においてどの程度みられるか検討する。すなわち、がん患者末梢血から分離した末梢血単核球を用いて、DNAJB8抗原ペプチドに対する免疫応答を確認する。DNAJB8抗原ペプチド、HLA-A24複合体テトラマーを合成し、DNAJB8ペプチド特異的CTLプリカーサーを検出する。また、ELISPOT法も用いてDNAJB8ペプチド反応性を確認する。OR7C1に関しては、抗原ペプチド候補を同定はしているが、論文報告には至っていない。今後OR7C1抗原ペプチドを論文報告し、ヒトがん患者における免疫応答の確認を行いたい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
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