研究課題/領域番号 |
24590451
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
幅野 渉 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (50332979)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 薬物代謝変動 / エピジェネティクス / 個別化薬物治療 / 腺管分離法 |
研究概要 |
本研究は、ヒト肝臓組織における薬物代謝酵素の発現・活性が変動する要因を明らかにし、薬物治療に応用することを目的とする。従来の遺伝子多型による要因の他に、エピジェネティクス機構(DNAメチル化)が関与することを証明するため、研究を進めている。 本年度は、ヒト肝臓癌細胞3種(HepG2、HuH7、JHH1)およびヒト正常肝組織(胎児または成人)由来のゲノムDNAを対象に、全45万箇所のCpG部位におけるDNAメチル化状態を網羅解析により調べた(HumanMethylation450 ビーズアレイ解析)。まず、シトクロムP450(CYP)薬物代謝酵素に着目し、クラスター解析(Cluster3.0)を行い、1)正常肝組織と比べ肝臓癌細胞で過剰メチル化状態となる18種のCYP分子種、2)成人肝組織と比べ胎児肝組織において過剰メチル化状態となる9種のCYP分子種、を同定した。これらのCYP分子種では、肝細胞の癌化・進展過程あるいは成熟の過程において、DNAのメチル化状態が変化することがわかり、薬物代謝酵素の発現や活性がDNAメチル化状態により制御されている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では病理解剖例を対象にヒト組織を用いた解析を予定していたが、本年度は解析に適した症例がなく、組織のサンプリングができなかった。予想されたことであったので、市販されているヒト正常肝組織由来のDNAおよびRNAを購入して対処した。次年度は引き続き、症例の集積を行う予定である。 その他の研究は計画書通りにおおむね達成されている。
|
今後の研究の推進方策 |
網羅解析により同定されたCYP分子種の発現がDNAメチル化により制御されることを証明するため、3種の肝臓癌細胞にDNA脱メチル化剤DACまたはヒストン脱アセチル化阻害剤TSAを添加し、mRNA発現量の変化をリアルタイムPCR法により解析する。 また、病理解剖症例を対象に、小腸・大腸組織、肝組織を採取する。小腸・大腸組織については、腺管分離法を用いて、腺管と間質に分けてゲノムDNAを回収する。同一個体内でのCYP遺伝子のDNAメチル化状態の差異を評価し、薬物代謝の変動要因を解明するための基礎的知見を得る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度の残額479円は、この金額の範囲内で必要な物品を購入することができなかったために生じた。特に研究計画、物品の購入の予定に大きな変更はない。
|