研究課題/領域番号 |
24590451
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
幅野 渉 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (50332979)
|
キーワード | 薬物代謝変動 / エピジェネティクス |
研究概要 |
DNA脱メチル化剤を処理した3種の肝臓癌細胞(HepG2、HuH7、JHH1)を対象に、SurePrint G3 Human Gene Expression 8×60K v3(アジレント社)を用いた遺伝子発現の網羅解析を行った。その結果、薬剤処理により遺伝子発現量が2倍以上増加する第I相薬物代謝酵素として27種のシトクロムP450(CYP)および17種の第II相薬物代謝酵素が検出された。これらの薬物代謝酵素は、肝癌細胞においてDNAメチル化により発現が制御されることが明らかになった。平成24年度に行ったDNAメチル化の網羅解析の結果と統合することにより、上記の発現量の増加を説明できる遺伝子として、4種のCYP遺伝子(CYP1A2、CYP1B1、CYP2C18、CYP8B1)および2種のグルタチオン S-抱合酵素遺伝子(GSTM2、GSTP1)が同定された。これらの6種の薬物代謝酵素のDNAメチル化状態と遺伝子発現量の増加は、それぞれCOBRA(Combined bisulfite restriction analysis)法とリアルタイムPCR法によっても確かめられた。一方、脱メチル化剤処理により発現量が増加した他の遺伝子については、転写を制御する遺伝子のDNAメチル化が関与する可能性が考えられた。 上記の研究成果は、平成25年10月に開催された日本薬物動態学会第28回年会(東京)において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常肝臓・腸管組織の入手が遅れているが、企業から購入した組織を用いて対応している。肝臓癌細胞を対象としたDNAメチル化と遺伝子発現の網羅解析の統合は成功しており、今後の正常組織における解析にも有用であることが確かめられた。
|
今後の研究の推進方策 |
正常組織の入手を継続するとともに、これを補完するデータとして、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のGEO(Gene Expression Omnibus)に登録されたDNAメチル化・遺伝子発現の網羅解析のデータを用いる。両者を統合解析することにより、正常肝臓組織においてエピジェネティクス機構により発現が制御される薬物代謝酵素を探索する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当年度の研究遂行に必要な研究試薬・消耗品が、33,747円の範囲内ではないため、次年度の物品購入費用として繰り越しを考えているため。 網羅解析の費用などに加える予定。
|