有効で安全な薬物治療を実施するためには、個体間あるいは個体内の薬物動態の変動のメカニズムを解明することが重要である。本研究ではエピジェネティクス機構に着目し、薬物代謝酵素の発現変動に関わるDNAメチル化の役割を探索した。すなわち、ヒト組織(肝臓、小腸)および肝臓癌細胞(HepG2、HuH7、JHH1)を対象としたDNAメチル化およびmRNA発現の網羅解析の結果をGEO(Gene Expression Omnibus)に登録された既存のデータセットと統合することにより、薬物代謝酵素(シトクロムP450および第Ⅱ相薬物代謝酵素)のDNAメチル化プロファイルの詳細を明らかにした。その結果、肝臓組織での個体間発現変動、および肝臓・小腸間での組織特異的な発現変動をDNAメチル化状態により説明可能な薬物代謝酵素遺伝子が同定された。また、DNAメチル化模様の特徴から、一部の薬物多使者酵素では、癌抑制遺伝子様あるいはハウスキーピング遺伝子様のはたらきが推測された。(本研究成果は学術雑誌に投稿中)
|