研究課題
本研究課題では、研究者の潰瘍性大腸炎(UC)及び関連腫瘍に対するこれまでの研究成果から、UCの継続的炎症抑制が関連腫瘍発生抑制に極めて重要であるという前提に基づき、UC患者大腸粘膜における網羅的解析によって、非活動性UC患者及び健常者粘膜に比して活動性UCで有意に発現上昇する分子として同定したolfactomedin4(OLFM4)の解析を行うもののである。本研究では、UCにおけるOLFM4発現誘導と機能解析を通じて、UC特異的なバイオマーカーとしての可能性を明らかにすると共に、UCの抗炎症・抗腫瘍発生の治療標的としての可能性を追求する。平成24年度には(1)OLFM4発現解析-1:OLFM4発現のUC特異性、(2)OLFM4発現機序解析を行い、(1)OLMF4発現がUC及びクローン病の炎症性腸疾患(IBD)に特異的に認められることを示すとともに、(2)NF-kBによるOLFM4の転写誘導を腸上皮細胞においても確認した。平成25年度は(3)OLFM4発現解析-2:OLMF4のバイオマーカーとしての可能性、及び(4)OLFM4の機能解析を行った。(3)において、OLFM4はUC及びクローン病(CD)において発現上昇が認められ、IBD特異的な炎症バイオマーカーであることが改めて示された。その際、UCとCDでは異なる発現機序・シグナル系を介する可能性が示され、引き続き解析を進めることとした。また、(4)においてこれまでの知見と反して、腸上皮細胞におけるdoxorubicin誘導アポトーシスにおいてOLMF4はpro-apoptosis機能を有することが示唆された。これは、OLFM4発現がUCの活動性炎症において発現上昇し、関連異形成・腫瘍病変においては発現が低下することを併せると、OLFM4が炎症巣において抗腫瘍発生作用を有している可能性も考えられた。ひきつづき解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
昨年度及び本年度の実施計画に沿った進展が得られている。
今後は、実施計画に基づいた解析を進めると共に、本年度明らかになった、(1)OLFM4のUCとCDでの異なる発現誘導機序の解明、(2)腸上皮細胞におけるOLFM4のpro-apoptosis作用の可能性、についても精力的に解析を進めていく。
本年度分の実施内容はほぼ計画通りで、助成金使用もほぼ予定通りであるが、前年度未使用分が次年度使用額として残っている。本年度実施計画により、概ね予定通りの研究費消化が見込まれ、前年度未使用分は本年度新たに明らかになった結果の解析にも用いる予定で、当初計画通りの研究費消化が見込まれる。
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