研究課題/領域番号 |
24590456
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
笠井 謙次 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (70242857)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子病理 / 細胞運動 |
研究概要 |
ヒト膵臓癌培養細胞株PANC-1での内在性SIL・Pak1の細胞内局在を解析した。その結果これら2因子は共に細胞先進部、特にlamellipodiaに集積していた。また同じくPANC-1を用いてsiRNAを用いたknockdown実験を行ったところ、SIL knockdown群ではControlに比べ有意に細胞運動能が低下していた。その際のPak1の細胞内局在はSIL knockdown群で細胞先進部への集積が限弱している傾向が観察されたが、今後定量性のある評価を行い再確認する必要が残された。またHEK293T細胞を用いた強制発現系・免疫沈降実験では、Pak1の機能亢進変異体(T423E)・機能喪失変異体(K299R)共にSILと複合体を形成し得ることを確認した。さらにPak1およびRac1の標的とされる因子(Raf1・MEK1・LIMK1などリン酸化酵素やcofilin・Stathminなど細胞骨格関連因子)のリン酸化状態をWesternブロットにより解析し、SIL knockdownにより一部のPak1関連細胞骨格関連因子のリン酸化状態が減弱することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pak1とin vitroで直接結合することを検討するため、HEK293T細胞での強制発現系・免疫沈降実験にて確認したSILのCoiled-coil配列を含む領域蛋白の大腸菌での合成を試みたが、実験に十分な回収量が得られなかった。実験の各段階の条件を検証する一方、in vitro translation システムへの変更を含めた検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
SIL knockdownによって従来知られていたすべてのPak1関連細胞骨格関連因子のリン酸化状態が変化するものではなかった。このことからたとえSILがPak1機能の制御に影響を与えるとしても、特定の条件あるいは特定のシグナル経路に特化した作用である可能性がある。そのため多くのPak1標的因子のいずれが変化するかを丹念に検証する必要性がある。そのため、SIL knockdown実験下でのPak1標的因子の細胞蛍光抗体染色による細胞内局在観察と、Westernブロットによるリン酸化解析を行う。またin vitroにおけるSIL-Pak1複合体形成をin vitro translation システムへの変更を含め検証する。またK-rasなどの変異を有する特定のヒト膵臓癌細胞株だけではなく、不死化膵管上皮細胞HPNEでも同様の所見が得られるか確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
SILが関与するPak1シグナル経路を同定するため、すでに用意したPak1標的因子抗体および同リン酸化抗体以外にも関連抗体を入手し解析に用いる。またin vitro translationシステムのための関連試薬を入手する。またすでに作成しているが十分機能解析の進んでいなかったtetracycline誘導性Pak1 T423E・K299R発現細胞株を用いた実験を行うために、特殊血清を含めた細胞培養関連試薬を入手する。
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