研究課題/領域番号 |
24590457
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
岩屋 啓一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (50312012)
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研究分担者 |
小田 美規 東京医科大学, 医学部, 助教 (50527942) [辞退]
石川 孝 東京医科大学, 医学部, 教授 (80275049)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質量分析 / 脂質 / レスベラトロール / 脂肪肝 / マクロファージ / 中性脂肪 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
MS(mass spectrometry)イメージングを用いてマウス脂肪肝モデルを解析した。MSイメージは、triacylglycerol (TG)の脂肪滴数と大きさを客観的に評価できた。レスベラトロール(天然抗酸化剤)を添加することにより、高脂肪食に比べて脂肪滴の大きさと数が減少した。この画像は、従来のH & E染色に比べて定性、定量性に優れている。(FEBS Open Bio 2014:19;4:179-84) MALDI-SpiralTOF-TOF (MS/MS)モードを用いることにより、脂肪滴内のTGは、食餌内(ブタ)のTGにおけるパルミチン酸の位置(J2)が外側(G1 or G3)に変化したマウスTGであることが証明された。 一般に、小型の脂肪滴からなる脂肪肝は、大型の脂肪滴で構成された脂肪肝に比べて生命予後が良好である。小型の脂肪滴膜を構成する物質にアディポフィリンがある。脂肪肝モデルのプロテオーム解析では、レスベラトロールを投与すると脂肪肝に比べてアディポフィリンの顕著なdown regulationが起こる。また、肝臓組織におけるセルソーターを用いた検討では、肝臓マクロファージが増加する。そこで、脂肪肝モデルにおける組織内で、アディポフィリンとマクロファージの局在を調べた。 レスベラトロールの添加により茶色のマクロファージが増加してアディポフィリンを含む脂肪滴をマクロファージが取り込んでいる。このことから、免疫細胞であるマクロファージが、TGの肝臓内蓄積を防いで活発な脂肪代謝に関与する可能性が示唆されるとともに、脂肪代謝に免疫機構が関与するひとつの査証となった。(Mol Nutr Food Res. 2015 Feb 12. doi: 10.1002/mnfr.201400564)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請において申請者が開発しようとする試みは、未固定生検体を用いた脂質シグナルに高分解能を示すMALDI TOF-TOF tandem MS imagingであり、さまざまな脂質を可視化して、病理診断への応用に繋がる可能性を示すことにある。MS imagingは、組織に直接レーザーを当てることにより物質を効率よくイオン化し、質量計測に基づいた脂質のプロファイリングを行って構造解析すると同時に個々の物質のイメージ化を行うことが可能になる。MS imagingは、物質の発現を組織形態上に対比させることにより、複数の物質の時空間的情報が把握される。今年度の結果は、その最終目標を最低限度ながら満たすものである。今後、さらに相対量の少ない脂質についてもMS imagingが行えるよう、更なる検討を加えたい。
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今後の研究の推進方策 |
肝胆膵外科、および泌尿器科と良好な研究協力体制にあり、サンプルの供給をいただいている。-80℃の冷蔵庫で保存し、その一部についてgenome-wide association studyを行っている。当初、腫瘍組織、非腫瘍組織について疎水性物質の検討を行う予定であったが、患者血清についても追加で検討している。今後、血中腫瘍マーカー検索の目的にて、MS imagingが行えるよう、更なる検討を加えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新機種のMALDI-TOF-TOFを操作するにあたり、専門の人材を確保したために、人件費が生じた。専門の人材から教育を受け、スタッフ全体の研究技術が格段に進歩した。新機種に対応するための研究技術の向上は本研究に必須である。
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次年度使用額の使用計画 |
MALDI-TOF-TOFを活用し、不溶性物質を含めた腫瘍マーカーの検討を行う。
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