研究課題
マウス脂肪肝モデルを用いて、脂肪に蓄積するtriacylglycerolをMS(mass spectrometry)イメージング法にて可視化した。イメージは定量的にも従来のH & E染色標本に比べて優れていることを報告した。さらに、蓄積された脂肪滴が、経口摂取されたレスベラトロールによって肝臓内マクロファージを活性化することにより、貪食する現象を観察した。この結果を(Mol Nutr Food Res 2015 59:1155-70)雑誌発表し、さらに日本病態栄養学会や日本病理学会に発表した。また、新たなマウスモデルを作成して、肝内における免疫能の評価を行った。(J Surg Res 2015 198:120-6)脂肪肝が、単に過剰なtriacylglycerolに起因するものではなく、マクロファージ系の免疫能が深く関与していることが証明された。現在、過剰な脂質の摂取が体内に与える影響について、細胞内センサープロテインを検討中である。DJ-1タンパク質もその候補で、体内にユビキタスに分布し、特に脳神経に高濃度に存在する。過剰な脂肪を経口摂取すると、DJ-1タンパク質は細胞外に分泌される。実際に高脂血症では血中DJ-1濃度が高く、糖尿病、慢性関節リウマチ、あるいはアレルギーにおいても、DJ-1たんぱく質が高濃度に血中に検出された。さらに、乳癌の担癌状態においては、癌細胞がDJ-1たんぱく質を分泌している。乳癌細胞が分泌するDJ-1はpI6.3のisoformが特異的に認められ、腫瘍マーカーとなることを明らかにした。DJ-1たんぱく質は酸化を含めた様々な修飾を受け、修飾の多様性が、細胞応答の複雑な機序の一部を担っている可能性が考えられた。(Cancer Sci 2015 106:938-43)
2: おおむね順調に進展している
脂質の可視化および構造決定については、前年度までに実行可能となり、雑誌発表(FEBS Open Bio 2014 19:179-84)も行った。その次に、組織における可視化のターゲットとして申請書に計画を予定していたPIP3については、他施設より雑誌発表があり、追試により技術的な問題は解決済みとなっている。
次の脂質のターゲットを決定するにあたり、臨床研究にどの様に応用すると最も実臨床に役立つのか、出口調査を行って方向性を決定する。高脂肪の経口摂取が体内に与える影響について、ストレスセンサープロテインを検討中であり、DJ-1タンパク質もその候補である。DJ-1たんぱく質は体内にユビキタスに分布し、特に、脳神経細胞では高濃度に存在する。DJ-1たんぱく質は細胞の内外に移動し、一旦細胞外に分泌されたDJ-1たんぱく質も細胞内に再度取り込まれる。血中に分泌されたDJ-1たんぱく質は血中ではエクソソーム分画に存在するが、その機能については不明な点が多い。機能解明の端緒としてDJ-1たんぱく質における修飾を質量分析器にて解析し、疾患別に分類する。その修飾の部位あるいは種類から機能を推定していく。
最終年度の結果成果発表のための費用に20万円程度が必要であり、数万円を確保した。
次年度の成果発表(論文、学会発表、本)に使用する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Mol Nutr Food Res
巻: 59 ページ: 1155-70
10.1002/mnfr.201400564. Epub 2015 May 18. PubMed PMID: 25677089.
Cancer Sci
巻: 106 ページ: 938-43
10.1111/cas.12673. Epub 2015 May 6. PubMed PMID: 25867058; PubMed Central PMCID: PMC4520647.
Ann Rheum Dis
巻: 75 ページ: 652-9
10.1136/annrheumdis-2014-206191. Epub 2015 Feb 2. PubMed PMID: 25646370; PubMed Central PMCID: PMC4819613.
J Surg Res
巻: 198 ページ: 120-6
10.1016/j.jss.2015.05.061. Epub 2015 Jun 4. PubMed PMID: 26123114.