研究課題
脂質は、エネルギー代謝を含む代謝全体に関与して生命を維持するうえで重要な役割を担っている。体内で最も豊富にみられる脂質のひとつにtriacylglycerol (TG)がある。TGは肉食物内にも多く含まれ、糖尿病や冠動脈疾患などの最も代表的な生活習慣病に関与している。Non-alcoholic fatty liver disease もそのひとつで、内臓に蓄積する脂肪は健康に密接に関連している。極めて重要な役割を担う脂質であるにもかかわらず、その発現を組織レベルで観察することは難しい。最も豊富にみられるtriacylglycerolでさえも、通常のHematoxylin and eosin (HE) 染色で観察する場合、標本作成過程において脂溶性の溶媒に溶け込み、経験的に存在していたと推定される空隙として観察するに留まる。従って、実際のTGの発現量や、その構造自体を検索することは不可能である。そこで、脂肪肝マウス動物モデルを用いて、TGの可視化を試みた。MS(質量分析 mass spectrometry)イメージは、従来のHE染色が、標本の空隙を評価して間接的にTGを評価したのに比べて定性、定量性に優れていた。MALDI-Spiral TOF-TOF (MS/MS)モードを用いることにより、脂肪滴内のTGは、食餌内(ブタ)のTGにおけるパルミチン酸の位置(J2)が外側(G1 or G3)に変化したマウスTGであることが証明された。質量分析器により、TGの発現と詳細な構造解析がマウス脂肪肝モデルで可能となった。さらに、MSイメージと従来の方法を合わせて解析することにより、レスベラトロールにより活性化されたマクロファージが、TGの肝臓内蓄積を防ぐ可能性が示唆された。今後、本研究課題の手法を用いて、解析が困難であった脂質代謝の機序が明らかになっていくことが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
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