研究課題
基盤研究(C)
1. 漿膜弾性板を越えた腫瘍微小環境の特徴に関する検討: 前年度までに、漿膜弾性板を越えた腫瘍部の組織学的特徴を検討する目的で、腫瘍の異なる場所(a: 腫瘍の中心部、b: 粘膜下層の浸潤先進部、c: 漿膜弾性板浸潤部、d: 漿膜弾性板非浸潤腫瘍先進部)のパラフィンブロックから組織を採取するfour point tissue microarrayを作成した。それらにおいて免疫染色を施行し腫瘍内の不均一性を検討したところ、漿膜浸潤部に相当する(d)において間質の線維化とα-SMA陽性線維芽細胞面積が有意に増加していることが判明した。また、CD68陽性マクロファージ数は腫瘍の中心部が他の腫瘍部と比較して有意に低いことが判明した。一方、CD31陽性脈管数、CD3陽性 T細胞数は腫瘍部位による差を認めないことが判明した。2. 漿膜由来線維芽細胞(SPF)の特徴2-1. SPFの採取: 前年度までに大腸粘膜下層及び漿膜由来線維芽細胞の初代培養を行い採取が可能であることを確認した。本年度は採取症例を増やし、4症例において粘膜下層由来線維芽細胞(SMF)及び漿膜由来線維芽細胞(SPF)を揃って採取できた。これらの症例を使用して cDNA microarrayを行う予定である。2-2. SPFの癌細胞増殖と転移に及ぼす影響: 前年度までにSPFを共移植した腫瘍は SMFを共移植した腫瘍と比較して腫瘍の増殖が速くリンパ節転移が多いことが判明したため、移植する腫瘍細胞数のみを変化させることによる造腫瘍能の検討を行っている。2-3. 定常状態及び癌細胞培養上清添加時のSPFのmRNA変化: 定常状態及び癌培養上清を添加した際のSPF, SMFにおけるmRNA発現の比較検討を、網羅的に行う目的で症例準備が行われ、現在検討中である。上記内容は平成24年度の日本病理学会及び日本癌学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成22年度までに漿膜弾性板をこえた腫瘍の浸潤を診断する有用性を報告した。予想以上に反響があり、reviewを依頼され本年度出版した。Four point tissue microarrayを使用したヒト漿膜弾性板をこえた腫瘍の浸潤部で実際に生じている現象の検討と、その現象に対するin vitro, in vivoモデルの作成及び生物学的検討が順調に進行している。検討内容は研究実績の概要に記載されたごとく、多岐にわたり、部分的にまとまり次第、学会報告することとしているが、全体がまとまり次第論文として投稿予定である。
個々の検討項目は順調に進んでいるため、継続的、かつ包括的な検討を行い、”漿膜近傍の腫瘍微小環境が腫瘍の進展に寄与する”という概念を形成するために必要な情報を集積する。24年度中には論文投稿を行い、国際学会における発表も増やす予定としている。
該当なし
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
J Clin Pathol.
巻: 未定 ページ: 未定
Front Oncol.
巻: 2 ページ: 未定
10.3389/fonc.2012.00179. Epub 2012 Dec 11.
http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/rcio/research/clip/mokojima.html