研究課題
樹状細胞(DC)は、T細胞に抗原を提示する抗原提示細胞としてよく知られており、脾臓やリンパ節などリンパ組織の他にも、皮膚や腸管、肺等、全身に広く存在する。DCは、生理的機能の異なる複数のサブセットに分類されることが知られており、ケモカイン受容体XCR1は、これらDCサブセットの中でも死細胞を取り込みや細胞傷害性T細胞を強く活性化する能力が高い、脾臓CD8+ DCやリンパ節CD103+CD11b- DCサブセットに極めて特異的に発現している。我々は、このXCR1遺伝子座にジフテリア毒素(DT)受容体と蛍光タンパク質venusとの融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させたマウス(XCR1-DTRvenusマウス)を作製している。このマウスでは、DTを投与することによりXCR1陽性DCを特異的に除去出来る。経口で投与された抗原(例えば食物)に対しては、通常免疫応答を起こすことはない(経口免疫寛容)。しかし、経口免疫寛容へのDCサブセットの関与については不明な点が多い。そこで、本年度は、XCR1陽性DCが、経口で投与された抗原に対する免疫寛容(経口免疫寛容)にXCR1陽性DCが関与しているかどうか検討した。経口免疫誘導時にDTを投与してXCR1陽性DCを除去し、その後XCR1陽性DCが回復後に免疫応答を誘導、抗原特的T細胞反応を検討した。その結果、抗原を前もって経口投与した野生型マウスでは、経口投与した抗原に対するCD4+ T細胞、および、CD8+ T細胞の免疫応答が、経口投与していないマウスに比べて減弱していたのに対し、DTを投与したXCR1-DTRvenusマウスでは、この減弱が認めらなかった。このことより、XCR1陽性DCが経口免疫寛容の誘導において重要な働きをしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、経口免疫寛容にこのXCR1陽性DCが関与するかどうかについてXCR1-DTRvenusマウスを用いて検討を行ったところ、その関与が確認出来た。そのメカニズムは、現在検討中であるが、一部、制御性T細胞の関与が疑われる予備実験の結果も得ている。当初の計画にもある、皮膚などの実験系に関しては、当初計画よりは若干遅れ気味ではあるものの、腸管におけるXCR1陽性DCの機能解明について上記成果も出ており、おおむね順調に進展していると考えている。
基本的には当初の計画の通りに研究をすすめる。特に、経口投与した抗原に対する免疫寛容の誘導において、そのメカニズムについて検討する。さらに、個体レベルでの経口免疫寛容について検討するために、遅延型過敏症のモデルをもちいて評価する。さらには、XCR1陽性DC以外のDCサブセットを特異的に除去出来るマウスについて、ES細胞を用いた遺伝子組換えマウスの作製を引き続き試みる。
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Journal of Immunology
巻: 190 ページ: 6071-682
10.4049/jimmunol.1202798.