研究課題
粥状動脈硬化症は我が国の死因の上位を占める心筋梗塞や脳卒中などの心血管病の組織学的な基盤となる病変であり、罹患血管においてはその前駆病変となる内膜線維性肥厚部に粥腫とよばれる脂質、結合組織、種々の細胞成分とその壊死変性物が蓄積、さらに潰瘍、血栓、石灰化等を伴って合併症に至る。血管平滑筋細胞は血管壁の基本的な構成要素であるが、粥状硬化の形成過程においては通常の形質から様々な病的形質に細胞性格を変貌させ病変形成を促進し、この現象は形質転換と呼ばれている。本研究はそのような血管平滑筋細胞の形質転換機序の解明をめざすものである。血管壁への種々の炎症性刺激が形質転換を誘発する可能性が指摘されているが、リゾフォスファチンジン酸LPAは、現在知られている最も重大な起炎刺激である酸化LDL(低比重リポ蛋白、いわゆる悪玉コレステロール)に由来する内因性脂質メディエーターで血管平滑筋細胞の形質転換因子の一つである。LPAは細胞膜表面の低分子量G蛋白結合性レセプターを介して細胞機能に影響するが、近年、従来から知られていたEDG型レセプターLPA1-3だけではなく、非EDG型レセプターLPA4-6の存在が明らかになった。本研究ではこのうちLPA4を介したシグナリングの意義について検討した。ラット大動脈由来血管平滑筋細胞でLPA1-6全てのレセプターアイソフォームのmRNA発現を認めたが、LPA4発現は従来まで主要なレセプターと思われていたLPA1より高い発現を示した。LPAは増殖刺激効果と同時に酸化ストレス亢進を示し、増殖型、炎症型への形質転換への関与が示唆された。LPA1-3の阻害剤であるKi16425の存在下でもG蛋白下流の主要な転写因子活性が維持された事よりLPA4はLPAによる血管平滑筋細胞の形質転換機序において重要な役割をもつ事が予測された。
すべて 2014
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Circulation journal
巻: 78 ページ: 2284-2291
10.1253/circj.CJ-14-0027