研究課題/領域番号 |
24590463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
高橋 智 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60254281)
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研究分担者 |
鈴木 周五 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60363933)
佐藤 慎哉 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30464564)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アンドロゲン受容体 / 転写活性 / MID1 / coactivator |
研究概要 |
MID1/TRIM18をLNCaP細胞に強制発現する際に、その発現量を変化させることでAR転写活性がどのように変化するかをPSAプロモーターを組み込んだルシフェラーゼ発現ベクターを用いて検討したところ、導入したベクターDNA量に相関してAR転写活性がDHT存在下で増強する事が確認された。このことからMID1/TRIM18はARのコアクチベーターである可能性が示唆された。Reymondらの総説(EMBO J, 9:2140-2151, 2001)ではMID1/TRIM18は細胞質に存在するとされていることから、MID1/TRIM18が実際に核内に移行する可能性について検討した。MID1/TRIM18を強制発現させたLNCaP細胞の細胞質および核分画タンパクを調整してMID1/TRIM18発現をみると、核および細胞質にMID1/TRIM18タンパク発現が観察され、その発現量は両者ともDHT存在下で亢進することが観察された。また、蛍光免疫染色による検討においてもウエスタン解析と同様に、MID1/TRIM18タンパクは核、細胞質に存在し、DHT存在下では特に核内MID1/TRIM18発現量が増強する傾向が認められた。以上の結果から、MID1/TRIM18タンパクは核内に移行することでAR転写活性に対して促進的に働き、新規のARコアクチベーターである事が示唆された。無治療状態のヒト前立腺癌におけるMID1/TRIM18タンパク発現を免疫組織染色によって検討した結果、Gleason patternが高くなる、すなわち分化度が低くなるに従ってMID1/TRIM18発現量は有意に増加しており、悪性度が高い癌ではMID1/TRIM18発現が亢進していることが明らかとなった。しかしながらこれらのMID1/TRIM18陽性像はいずれも細胞質で観察され、核内における発現は明らかではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初思っていた以上に研究に携われる時間が少なく、さらに想定していたような実験結果が得られなかったために、予定より研究の進行がやや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
MID1/TRIM18と同じTRIMファミリー分子であるTRIM24, TRIM68はARコアクチベーターであることが報告されており、これらはヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するTIP60、p300と結合することによりAR転写活性を制御していることが明らかにされている。そこでMID1/TRIM18がTRIM24, TRIM68と同様にTIP60, p300と直接的な結合の有無について免疫沈降法を用いた解析を行う。TIP60, p300以外のAR転写ユニットを構成する分子に対する結合の可能性についてもin silico分析を含め、解析を進めて行く。また、LNCaPにMID1/TRIM18を強制発現させた安定株LNCaP-MID1およびその対照株LNCaP-mock、さらにはLNCaPから樹立したアンドロゲン非依存性株LNCaP-AI5にsiRNAを導入してMID1/TRIM18発現をノックダウンさせたLNCaP-AI5-siMID1およびその対照であるLNCaP-AI5-siControlの間でマイクロアレイ解析を行っており、そのデータを詳細に解析することでMID1/TRIM18発現亢進に伴って発現が変動する遺伝子群を抽出し、去勢抵抗性前立腺癌治療の標的分子としての可能性について検討する。また、無治療の前立腺癌ではその悪性度とMID1/TRIM18発現量が相関していたが、ホルモン治療に対して抵抗性を示す症例についてMID1/TRIM18発現を検討し、去勢抵抗性前立腺癌におけるMID1/TRIM18の役割について解析、特にMID1/TRIM18タンパクの核移行がこのような癌でみられるかについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金 990.053円、平成25年度 1,600,000円、計 2,590,053円 前年度に解析できなかったMID1/TRIM18タンパクとAR転写ユニットを構成する分子との相互作用の解析を中心に行う。 タンパク相互作用受託解析 1,200,000円、物品費 1,390,053円、計 2,590,053円
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