研究課題
LNCaP細胞において、MID1/TRIM18がAR転写活性を制御している事を明らかにしたが、その際に他の転写因子との相互作用の有無について検討した。過去の報告では、MID1/TRIM18と同じTRIMファミリー分子であるTRIM24, TRIM68はARコアクチベーターとしての機能が明らかにされており、アセチルトランスフェラーゼ活性を有するTIP60, p300と結合することでAR転写活性を制御していることが知られている。そこでTIP60, p300の発現ベクターを構築し、MID1/TRIM18発現ベクター, PSAプロモーターレポーターと同時にLNCaP細胞にトランスフェクションし、レポーターアッセイにより解析した。その結果、MID1/TRIM18によるTIP60, p300転写活性増強効果は認められず、MID1/TRIM18のARコアクチベーターとしての機能は転写因子との相互作用によるものではない可能性が示唆された。そこで、別のメカニズムを想定し、MID1/TRIM18と同様にLNCaP細胞に比較してLNCaP-AI細胞で高発現(11倍)しているalphaB-crystallin (CRYAB, HspB5)に着目した。その理由として、ARタンパクが核内移行する際に重要な役割を演ずる熱ショックタンパクの1つとしてHsp27 (HspB1)が知られているが、CRYABはHsp27に類似した構造を有する熱ショックタンパクであることが挙げられる。MID1/TRIM18, CRYABを高発現しているLNCaP-AI5, -AI8細胞にsiRNAをトランスフェクションすることによりMID1をknockdownすると、それに連動してCRYABの発現も低下することが確認された。しかしながら、これらの細胞においてCRYAB発現はDHTの存在下、非存在下に関わらず顕著な変動はみられず、蛍光免疫染色においてもDHT添加によるCRYABタンパクの核内移行は観察されなかった。また、MID1/TRIM18とCRYABの二重蛍光免疫染色では両者の会合・結合を示唆する像はみられなかった。
3: やや遅れている
当初想定していたような実験結果が得られなかったために、予定より研究の進行に遅れが生じている。
二重蛍光免疫染色にてMID1/TRIM18とCRYABの会合・結合およびCRYABの核内移行の可能性は低いと考えられるが、これらの点について免疫沈降法あるいは細胞質・核分画タンパクを用いて確認すると同時に、MID1/TRIM18の発現を変動させることによるCRYABタンパクのリン酸化の有無について検討する。また、siRNAによりMID1/TRIM18発現をknockdownさせることでCRYABタンパク発現が減少することから、CRYABはMID1/TRIM18の下流に存在することが示唆される。これらの事実からCRYABもMID1/TRIM18と同様にそのタンパク発現が亢進することにより前立腺癌細胞の増殖、浸潤能、AR転写活性が増強されるかどうか検討する。
研究の進行に遅れが生じているために予定使用額を使い切れなかった。前年度に解析できなかったMID1/TRIM18とCRYABとの相互作用および前立腺癌細胞におけるCRYABの機能について解析する。
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