研究課題/領域番号 |
24590464
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
竹腰 進 東海大学, 医学部, 准教授 (70216878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PKC / 酸化ストレス / スプライシング / ジアシルグリセロール |
研究概要 |
下記に示すように、本年度は(1)酸化ストレスに対するPKCδSVの抑制作用を明らかにし、また、(2)PKCδSVの定量系を確立し2種類の酸化ストレスモデル動物組織においてPKCδSVが有意に増加することを明らかにした。 (1)PKCδSVによる酸化ストレス誘導性細胞傷害の抑制効果を検討するため、細胞にスーパーオキサイド産生薬剤であるMenadioneを投与し酸化ストレスを負荷させた際の細胞形態の変化の様子を観察した。Menadione単独投与群では未処理のものと比較して樹状突起の数珠状の変性傷害が強く誘導された。またコントロールであるLacZ発現細胞においても突起の変性傷害が観察された。一方、PKCδSVの強制発現細胞ではMenadione刺激における突起の変性傷害が抑制されることが明らかとなった。また、Menasione単独投与群では、未処理のものと比較して細胞生存率が約40%減少した。PKCδSVの強制発現細胞ではMenadione刺激による細胞生存率の減少が有意に抑制された。 (2)次にPKCδSVの発現をreal-time RT-PCR法により計測するシステムを確立し、この測定系を用いて酸化ストレスによるPKCδSV発現の増加を定量的に詳細に観測した。2種類の酸化ストレスモデル動物(CCl4投与による肝細胞傷害モデル及び4血管閉塞全脳虚血再灌流傷害モデル)を用い、酸化ストレスが負荷された生体組織におけるPKCδSVの発現動態を検討した。その結果、酸化ストレスモデル組織中においてPKCδSVの発現が正常組織と比較して有意に増大していること明らかとなった。 以上の結果から、PKCδSVは酸化ストレスにより誘導され、酸化ストレスを制御する機能を有する分子であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、PKCδSVの酸化ストレス傷害抑制作用を明らかにすることができた。また、PKCδSVの定量的測定システムを確率し、2種類の異なる酸化ストレス傷害モデル動物(4血管閉塞虚血再灌流、四塩化炭素投与)においてPKCδSVが有意に増加することを明らかにすることができた。本定量システムは、PKCδSV産生の分子機構を明らかにするための有用なツールとなると思われる。PKCδSVの発現機構解析に関する詳細な検討は次年度以降となる予定であるが、PKCδSVが産生される実験系を確立することができたことから順調に実験は進行するものと考えている。PKCδSVおよびPKCδのコーディング領域を解析するためのプローブ等の準備も終えている。
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今後の研究の推進方策 |
PKCδSVの発現機構を明らかにするために、正常組織・細胞および酸化ストレスモデル動物組織・細胞を対象として、コーディング領域(特にスプライシング部位)の解析を行う。また、スプライソーム関連分子群の発現解析を行う。また、酸化ストレスによる各分子の細胞内局在性およびリン酸化状態の変化を解析する予定である。以上の検討を行うことで、酸化ストレスを抑制する新しい分子としてのPKCδSVの役割を追究し、酸化ストレス傷害について生体防御システムの面から考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子解析およびスプライソーム関連分子群の発現解析を行う。従って、次年度の研究費はDNAシークセンス、発現解析用の抗体の購入、real-time RT-PCR用の試薬の購入、などの費用にあてる。
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